駿太、まさかの恋のライバル

孝司の使命。

それは、駿太、佐和、湊の一方通行の恋に終止符をつけることだ。

(部外者なのに…、何でこんな事…)

孝司はそう思ったが、3人とも自分と春乃がうまくいくように協力してくれているので、

少しはその恩に報いなければならない。



とある日のいつもの駅。

孝司は、駅で駿太を見かけて、声をかけに行った。

「駿太」

「おう…」

「なんか、久しぶりだね」

「うん…」

駿太は、孝司に佐和の事が好きなのを知られているので、気まずかった。


「あのさ」

「…何?」

「…あのさ」

「……?」

孝司の歯切れの悪さに、駿太は少しイラッとした。

「駿太、佐和のこと好きだよね?」

歯切れの悪さにイラッとはしたものの、こうもド直球でこられると、なかなかのショックを受けた。

それでも駿太は、孝司に誤魔化すのは嫌だったし、誰かに言いふらしたりはしないとも思っていたので、素直に答えた。

「…うん。そう」

「…だよね…」

「?何?」

「佐和、ずっと片想いしている人がいて…。聞いてりした?」

「…うん。チラッと」

「誰かは聞いた?」

「いや」

「そっか…」

「誰?」

「……」

「…お前じゃないよね?」

「違う違う!」

孝司は、手を振って否定した。

「じゃ、同じ中学だったやつ?」

「ううん…」

「じゃ、」

「…あのね、春乃の兄ちゃん」

一瞬、時が止まった。

「え?」

「春乃の兄ちゃんの湊君」

「みなと…?」

「…?」

「…前に、葉山さんとドラマの話してて…。そのドラマにミナトっていうヤツが出てるって言ったら、葉山さんがすかさず小林兄と同じ名前だって言ってて……」

「そうなんだ…」

2人は黙った。


孝司は、駿太といる時でも湊を思う佐和を少し悲しく思った。

湊を想ったところで、報われる事はないだろうし、佐和のこと大事にしてくれるであろう人が隣にいるのに、それに気がついていないからだ。


「でも、小林兄ってすごい年上だよね?」

「9歳上」

「9歳?!」

「そう。だから見込みないんだけど」

「じゃ、何でずっと片思いしてるの?」

駿太は不思議そうな顔をして聞いた。

「湊君て、かっこいいし、頭良いし、優しいんだよ。表向きだけど。あの人超える男ってなかなかいない気がする」

「まぁ、モテそうだよね」

「それに、湊君。佐和の気持ちに気がついているんだよ」

「?」

「巧妙に告白されないように、振る舞ってたの」

「?」

「告白して、振られるのが一番諦められると思うんだけど。湊君は、佐和も妹みたいに思ってるから、傷つけたくなかったみたいで」

「そんなの、エゴじゃん…」

「そう。でも、しょうがないよ。9歳も下の子、わざわざ振りたくないでしょ」

「でも…」

「とにかく、佐和に好きになってもらうの現時点では結構大変だと思う」

「……」

「駿太?」

孝司はうつむいた駿太を見て声をかけた。

「何で、俺の好きになった子は、こうも超難解なんだ…」

「難攻不落…」

駿太は孝司を睨んだあと、深いため息をついた。


「俺は応援するよ」

「うん…」

「友達だから」

「……」

「返事せぇ」

「ハハッ」

駿太は初めて、孝司の前で素直に笑った。

「…ありがとう」

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