佐和と駿太の近づく心

駿太と佐和は駅で会えば話すようになっていた。


「どうも」

「あ、駿太くん。今日、駿太くんの高校の人多くない?」

「あぁ、短縮授業だったから」

「春乃達は?」

「わからないけど、谷川の待ち合わせ時間に合わせてるんじゃないの?」

「なるほど。じゃ今日も会えないか」

佐和は寂しそうにした。


「ホント仲良いね」

「うん。そうだね」

「葉山さんも、幼馴染?」

「小5からの友達だから、幼馴染みではないかな」

「ふーん」

「でも、私が、4年かけてあの2人くっつけたんだよ」

佐和は少し偉そうに言った。

「すげ」

「私のおかげです」

「あはは。あ…、俺、それ引き離しちゃった…?」

「離れたあと、付き合ったんだからいいんじゃない?」

「…そっか」

「でも、まさか春乃が孝司以外と付き合うとはね」

佐和は笑った。

「付き合うって言っても、好かれてたわけじゃないから」

駿太は少し元気がなさそうに言った。

「そうかな」

「一緒にいて、楽だとは言われたけど…」

「ほんのちょっとは、好きだったんじゃない?」

「ほんのチョット…」

「ごめん…」

「いや、ちょっとでも好きでいてくれたなら嬉しいよ…」

「まだ、引きずってる?」

「全然」

「そう?」

「そう」

「そっか」


「駿太くんカッコいいしね。相手には困らないか」

「…すんごい遊んでる人みたいに言わないで…」

「あはは。ごめん」

「それに別にかっこよくないし…」

「そう?駿太くん、ほら、背も高いし」

「え」

「背」

「あ、背。普通じゃない?谷川より低いでしょ」

「そう?」

「…葉山さんは、背、小さいね」

「……」

「何?自分でこの話題フッといて…。怒ってる…?」

「……」

駿太は笑ってしまった。

「笑うな…」

佐和は恥ずかしそうに言った。

「可愛い…」

駿太は、ボソッと声に出して言ってしまった。

(やべっ…!)

「え?」

「え?!」

「何?」

「何が?!」

「?」



それ以降、駿太は、佐和に会えるように電車を一本早めるようになっていった。


「暑いね」

駿太が佐和に話しかけた。

「あ、駿太くん。暑いね」

2人は、いつもなんとなく同じ乗車口で会った。

「うん」

「日焼けした」

駿太は首あたりを手で触った。

「ホントだ。何かスポーツでもしてるの?」

「剣道?」

「日焼け関係ないじゃん」

「スポーツしてるかって聞かれたから」

「日焼けするようなスポーツをしてるのかってことじゃん」

「じゃ、そう言ってよ」

「めんどくさい」

佐和の冷たい態度に駿太は、笑った。


「そういえば、葉山さんて、”サイレント”見てる?」

「ドラマ?見てない」

「え、そうなの?うちのクラスの女子が盛り上がってたけど」

「駿太くんは見てるの?」

「うん」

(女子はたいてい見てるから、葉山さんも見てるもんだと思って…。見たくもないのに見てた…)

「へぇ。何がいいの?」

「元彼に久しぶりに会ったら、耳が聞こえなくなってて…みたいな…」

「ふーん、切ない感じするね」

「クラスの女子は、ソウ派かミナト派かみたいな話してた。あ、主人公のことを好きな男子が2人いてね。ソウとミナト…」

「ミナト?」

「うん。何?」

「春乃のお兄さんと同じ名前…」

「そうなんだ」

「うん」

(私は湊派…。なんつって…)

「ん?」

「ううん。何でもない…」


「私はね、今、ハライチにハマってて」

「へぇ。存在は知ってるけど」

「ラジオが、面白いから聞いて」

「ラジオか…。…聞かないかもしれない」

「聞かないんかい」

「ははっ。じゃ、聞いてみる」

「聞かなそう…」

「……」

「ほらね」

佐和と駿太は笑った。

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