番外編 もう、二度とかばわない!!
「春乃ちゃん、彼氏いるらしいよ」
春乃と孝司の事が、春乃の高校で、噂になっていた。
放課後の教室。
「誰か、春乃ちゃんの彼氏見た?」
「私、駅で、彼氏といるの見たよ」
「どんなやつ?」
「北高の制服着てたよ」
「へー。頭いいんだ」
「学園祭に来てたヤツかな。背は高かったけど、割りと普通の感じだったよ」
「すごいイケメンと付き合ってそうなのにね」
「あの彼氏なら、俺、いけるんじゃないかな」
「ばかじゃねーの?」
「いや、本当に普通のやつだったんだよ」
「春乃ちゃんの彼氏がぁ?」
「いや、まじで」
クラスで、ワーキャー言ってるのを見て、駿太はなるべく息を潜めて教室を出ようとした。
「あっ…。中野ってさ、春乃ちゃんと付き合ってたんだよね?」
(間に合わなかった…)
「うん、少しだけ…」
「…あの彼氏の事…知ってる?」
皆、駿太に春乃の話なんて聞いてはいけないとは思っていたが、好奇心のほうが勝ってしまっていた。
「うん」
「え!どんなやつ?」
「幼馴染みだって」
「へぇ」
「幼馴染みって得だな。たいした奴じゃなくても、付き合えるんだから」
学園祭で、孝司を見た男子が言った。
「確かにね。仲はいいんだろうけど、ちょっともったいないよね」
「妥協してる感あるよね」
駿太は、なんとなくイライラした。
「あの人、中学からずっと、成績が学年1位らしいよ」
駿太が口を出した。
「えー!そうなんだ。春乃ちゃん頭いい人が好きなんだね」
「頭の良さじゃ、北高超えられないかぁ」
「安易だな…」
駿太がボソっと口に出してしまった。
「何だよ。パッと見お前のほうが春乃ちゃんと似合うだろ」
(…え、いいヤツ…)
「…私、春乃と彼氏の会話聞いたことあるんだけどさ…」
「え?!何?」
回想
「春乃、学校で告白されなくなった?」
「ん?うーん…」
春乃と孝司は、電車に乗り込んだ。
いつも通り、電車の角に身を潜めていた。
「一緒に帰っててもダメなのか…」
「そうだね…」
「もう一回、人前でキスする…?」
「嫌」
春乃は孝司を睨んだ。
「前は、自分からしてきたくせに…」
「嫌」
孝司は春乃の顔を覗き込んだ。
「何?」
「家でなら、してくれる?」
「……」
「いい?」
「うーん…」
「ん?…どっち?」
「うーん」
「…どっちだよ」
孝司はフッ笑った。
「好きって言ってくれる?」
「好き?」
「疑問形にしないで」
「好きだよ」
「どのくらい?」
「宇宙一」
「そうなの?」
「そうだよ」
「じゃ、する…」
「だって、やばいじゃん!」
「電車でする話じゃねーよ」
「てか、春乃ちゃんにキスを要求できるの?」
「やばっ」
(何だよ…。ふざけんなよ。もう、二度とかばわねぇ…)
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