俺が好きだって言って、別れて…

小林家に孝司が来るのが日常化していた。

春乃は孝司に会いたくなくても会う機会が少しずつ増えていった。

そして、なぜだかたまに、孝司が湊の部屋からぐったりして出てくる時があった。


ある日、春乃が部屋を出るとひどくぐったりしてる孝司に会った。

「お兄ちゃんの部屋で何してるの?」

珍しく春乃から話かけた。

「ん?湊君の講義が…」

「何それ、勉強?」

「そうだね…」

「ふーん…」

「あ!違うよ!今、家でね、勉強の仕方変えてる途中で。パブロ兄ちゃんが教えてくれる事になって、その他の部分をどれくらい止めればいいか、検証中で。落ち着くまで、不安だろうからって、湊君が、英語だけスパルタ講義をしてくれてるの」

「ふーん…」

「今だけ…。信じてくれる?」

「うん…」

「良かった…」

孝司は、少し安心した。

「…孝司…」

「ん?」

「えっと…」

「ん?」

「彼氏と、どうすればいいかな」

(あ、違う!そんな事言いたいんじゃなくて…)

「別れればいいと思う」

孝司は冷静な顔で言った。


「なんて言って…?」

「俺が好きだって言って…」

「好きかわかんないもん…」

春乃は下を向いた。

「こっち見て?」

「やだ…」

そのまま、春乃は行ってしまった。



一方、高校では、駿太と春乃は少し距離を置いていた。

春乃は久しぶりに、駿太に誘われて一緒に帰る事になった。

「元彼と会ってるの?」

駿太はいきなりストレートに聞いてきた。

「うん…。うちのね、お兄ちゃんの所に毎日来るの。それでたまに、顔合わせたり…」

「ふーん」

駿太はいつも深くは聞いてこなかった。

「今度の文化祭、一緒にまわれる?」

「え…」

「無理ならいいよ」

「やめとく…」

「わかった」

それから沈黙が続いたあと

「俺達、まだ付き合ってるって事でいい?」

駿太は軽く聞いてきた。

「…わかんない」 

「ふーん」

「ふーんって」

春乃は思わず笑ってしまった。



今日も湊の部屋から出てきた孝司は疲弊していた。

「そんなに、勉強してるの?」

春乃は孝司に聞いた。

春乃は、最近は普通に孝司に話しかけるようになった。

「いや、最近は講義が短くなったかわりに、からかわれて…」

「あぁ…。想像つく…」

「ちょっとね…、疲れるね」

孝司は力なく笑った。

「何の話してるの?」

「…俺の小さい時の話とか…」

「そっか…。…無理にうち来なくてもいいよ…?」

「無理したいの」

春乃の目を見て言った。

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