孝司がカワイイ湊

「孝司」

「はい?」

孝司は、谷川家に遊びに来ていた湊に声をかけられた。

「春乃から、話、聞いたよ」

「…」

(めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど…)

湊は孝司の顔が赤くなっていくのを見た。

(かわいいなコイツ…)


「孝司に足りないのは、信用らしいよ」

「信用…」

「うん、全然信用されてないよ」

「全然…」

「うん」

「どうしよ…」

「頑張って」

「…え?それだけ?」

孝司が呆気に取られた。

「じゃ」

湊は行ってしまった。


孝司は一瞬考えこんだが、湊を追いかけリビングまで行った。

そこには絵理とパブロもいた。

「ねぇ!」

孝司は勢いよく言った。

「孝司、どうした?」

パブロが少し心配そうな顔をした。

「あのさ…、信用ってどうやってしてもらうの?」

(…かわいいかよ)

湊は微笑んだ。

「春乃ちゃん?」

絵理は聞いた。

「うん…」

「なんの信用?別に信用できる人だと思うけど…」

「なんの信用?!」

孝司はすごい剣幕で湊に聞いた。

「え?」

3人が湊に注目する。

「孝司が、ずっと一緒にいたいって。勉強の時間減らして、会う時間増やすって。諦められないって言ってるのを信用できないんだって」

「ちょっとぉ!!!言わないでよぉ!」

(かわいいかよ)

また湊はほっこりした。

それを見た、絵理とパブロはため息をついた。

「うちの孝司…いじるのやめてよ…」


「…せめて、答えちょうだい…」

孝司が涙目で言った。

(かわいいかよ)

「答え…?」

湊はキョトンとした声を出した。

「ちょっとぉ!」

「かわいいねー」

「湊」

パブロは怒った。

絵理もジロリと睨んだ。


「勉強の時間を減らすことを信じられないんだってさ」

湊は、ちゃんと真面目に話し出した。

「…」

「…」

「…」

孝司と絵理とパブロは黙った。

「ん?どうしたの?」


「俺、狂ったように勉強してたからさ…」「うん、隙あらば勉強してたもんね…」

「パブロがそうだったから、うちではそれが当たり前みたいになってて…」

「あれ、見せつけられたらね」

「どん引きだよね…」

「あれをヨシとしてやってた人が、急に勉強時間減らしますって言っても…」

「嘘だろって思うよね…」

3人は、どよんとした。


「ちょっとなに暗くなってんの?」

気合を入れ直すように湊が声をかけた。

「それを覆すには、どうするかって話でしょうが」

「…そうだよね。いい事言うね」

「ね…」

「うん…」

「ちょっと!暗さ引きずってるよ!しっかりしなよ」


「とりあえず、孝司はどのくらい、春乃に会う時間をつくれるわけ?」

「…パブロ兄ちゃん、どうしよ。結局どのくらい勉強すれば…」

孝司はパブロに助けを求めた。

「え。…俺、とにかく死ぬほどやってきた人間だから、実は良くわかんなくて…」

ヘラヘラ笑った。

「えー?!あんな偉そうに言っておいて?」「ごめんね。とりあえず、1日1時間くらい減らす?」

「そんなにか…」

  

「ほら、呪縛解けてないよ」

湊が声をかけた。

「呪縛?」

「勉強に呪われてるの、孝司は」

「俺呪われてたの?」

「そ」


「孝司が勉強するの我慢しすぎるとそれはそれで良くないからさ。春乃の事も、自分の事も考えて、いい塩梅のとこ、ない?」

「…湊君…」

「何?」

「実は、頼りになるんだね」

「…。お前の姉ちゃんと兄ちゃんよりはな」

「ちょっとぉ」

2人のツッコミを湊は無視をした。


「1日、30分…。少ないかな?」

孝司は不安そうに湊に言った。

「じゃ、その時間を確実に春乃のために使うって事を証明出来ればいいわけでしょ?」

「証明…」

「毎日さ、俺のとこ来なよ」

「え?!でも、それは嫌がられるんじゃ…」「俺のとこ」

「湊君に会いに?」

「それなら文句言えないでしょう」

「…そうだね」

「だめ?」

「いや…、湊君か…」

「いじめられそうだもんね」

絵理が心配そうに言った。

湊は、絵理を睨んだ。

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