一緒にいたい…。溢れた本音

「もう…。タラタラタラタラ…」

「?」

「春乃ちゃんの事、そんなんなるなら諦めないでよ…」

「だから…無理…」

「勉強の仕方、考えなおせばいいじゃん」

「…」

「孝司には、俺の勉強法は合わないよ?」

「…ずっとそうしてきたから、どうすればいいのか、わからないもん…」

「単純に、勉強時間を減らして」

「不安だよ…」


「俺と孝司は地盤が違うんだから」

「そうだよね…。俺なんかじゃ…」

「違うよ」

「?」

「地盤が在るのは孝司の方だよ」

「?」

「俺は16歳で、ようやく勉強に本気だしたけど、孝司は小学生の時から、あんなに勉強してんだから」 

「でも…」

「俺みたいに死ぬほど勉強しなくて大丈夫」「でも、死ぬほど勉強しないと、助けられる人も助けられない…」


「どんなに勉強しても、救えない命だってあるよ。孝司を助けられたのは、生きる可能性があったから、助けられただけで…」

「ここまで勉強するの意味ないってこと…?」

「俺は、そうする事でしか絵理と一緒にいられなかったけど。孝司は違うでしょ?」

「…違うけど…」

「孝司の大事な人は、春乃ちゃんじゃないの?」

「そうだよ…」

「春乃ちゃんを守ることは、孝司が、医者になる事で出来ることではないよ」

孝司はうつむく。


「勉強の仕方考えなおして、ちゃんと春乃ちゃんと向きあって?」

「…」


「それにね…。他の人に無くて、孝司にあるもの、わかる?」

パブロはふざけたように言った。

「わかんない…」

「俺」

「何それ」

孝司はフッと笑った。

「優秀な医師が、近くにいるんだから心強いでしょ?勉強の補助は任せなさい」

パブロは笑った。


「…春乃と…一緒にいたい…」

「…うん」

孝司は涙を必死にこらえていた。

「なんで、春乃に彼氏がいるんだろ…」

「じゃ、春乃ちゃん、奪い返そ」

パブロの指差す方に、春乃と彼氏が歩いていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る