筋トレ系Vtuberとゲーム配信 2

「お待たせ〜。さぁシよっか?」

 せりは、少し申し訳なさそうにしたと思うと、すぐさまいたずらに笑う。

「ゲームだよね?」

「もっちろーん。どれにするー?」

 セットのなかにあるゲームは格闘系から、フィットネス、更には謎のスイミング・ゲームなどなど……。僕の目は、完全にスイミングに奪われている。「どれにする?」だって?スイミング・ゲーム1択だ。

「決まったー?」

 いや、待てよ。今日のせりは、あざと過ぎる。スイミング・ゲームなんて選んだ日には、小一時間誂われることが目に見えてる。

「ボクシングゲームで。」

 僕は、あくまで平静を装い答えた。よくやった!僕の理性!

「ふーん。オッケー。」

 せりはゲームをセットする。


「リアル・ボクシング!vol12」


 ゲーム画面がモニターに映る。なんだ、このB級映画のようなタイトルは。タイトルだけで、クソゲー臭がただよってくる。でも、これ12作目なのかよ。実は大人気なのか……。

「わー。取り敢えずコンピューター対戦でっと。たっちゃん、先いいよ。」

「え、いいの?」

「用意、たっちゃんがしてくれたんだから当然じゃん!」

 せりは笑顔でコントローラーを僕に差し出す。

「ありがと。じゃあ、やってみるね。」

 手で握れるコントローラーを両手に1つずつ持つ。どうやら、自分の動きに連動してキャラクターが動くようだ。パンチの種類だけでなくスピード、それにガードも全部連動している。意外と高性能らしい。取り敢えず、やってみるか。

 

「たっちゃん、がんばれー!」

「そこだー!イケイケ!」


 結論。すげー楽しかった。そして、驚くほど疲れた。

「……ハアハア。なんとか、勝てたよ。せり、次どうぞ。」

「ありがと。ボコボコにするから、たっちゃん見ててね。」

「うん。」



 宣言通り、せりは、コンピューターを倒した。僕の半分の時間で。単純にすげー。


「ふー。楽しかった。次、対戦しようよ。」

「いいけど、連続で大丈夫?」

「たっちゃんより体力あるから大丈夫だよー。」

「ふーん。じゃあ、負けたほうが週末の料理担当ね。」

「お。いいね。じゃあ、私が勝ったらコース料理で。」

「いいだろう!僕が勝ったら握り寿司だ!」

「彼女の手料理で握り寿司って……ふふふっ。」

「……いいだろ。寿司好きなんだから。」

「おっけー。じゃあ勝っても負けても文句なしね。」

「もちろん。」

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