筋トレ系Vtuberとの1日 3

 夕方4時。

 僕は学校から帰り、いつも通りに家事をこなしていた。掃除をして、洗濯をしてから夕飯の買い物に出かけた。

 食材を買ってから家に帰るころには、日が沈み始めていた。

「ただいまー。」

 せりが帰っているかと思い、声を掛けてみる。けれども、反応がない。どうやら、帰っていないみたいだ。キッチンで、冷蔵庫に食材をしまい、一度ソファに座る。スマホを開くとせりからメッセージがきていた。

『7時には帰るよー!』

 短いメッセージと猫のスタンプが送られてきている。

『りょーかい。

 ごはん作って待ってるよ。』

『ありかとう!』

 また猫のスタンプが送られてきた。今度は、両足をあげて喜んでいる様子のものだ。



「たっだいまー!!」

 玄関から、大きな声が聞こえる。中学生のような陽気さだが、これで僕より歳上なのだ。そんなところもかわいいと思うのだけど。

「おかえりー。」

「ごはんなにー?」

「唐揚げだよー。」

「わーい!荷物置いたらすぐ行くねー!」

 ドタバタと階段を上がる。僕は、その音を聞いてから唐揚げを揚げ始める。大体、せりは部屋にあがってから15分くらいでリビングに来る。多分、ちょうどよく揚がるだろう。



「ごちそうさまー!今日も美味しかったよぅ。」

「ありがとー。」

 せりは毎日、食事を美味しいと言ってくれる。それが嬉恥ずかしい。にやけそうになる顔を必死にこらえる。

「いやぁ、実家出てここに来てよかったぁー。」

「それなら、良かったよ。僕も、せりが家に来てから楽しいし。」

「……えっ。あっ。そうなの~。」

 せりが少し頬を赤らめたが、すぐに意地悪そうな顔をして言う。

「……うん。楽しいよ。」

「そっかー。たっちゃんも私との同棲を楽しんでくれてたんだー。えへへ。」

「……!?同棲って!そうだけど、そういう意味じゃ……。」

 ――僕は、なんて、恥ずかしいことを言ったんだ。

 僕の顔が真っ赤になる。

「あはは。顔真っ赤~。じゃあ、配信するから地下いるねー。」

 キャッキャと笑いながらせりは地下に向かった。

 それを見送ると、僕は食器洗いを始めた。いつもは冷たすぎる水も、今日はやけに心地よく感じた。

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