ギフト番外:吉良光は真相を知りたい
クレイG
吉良光は真相を知りたい。
とある昼下り……
某所の会社で、女性社員は昼休憩をしながら談笑をしていた。
そこを一人の男が通る。
「ねえ、あの人……」
「うん!すっごいイケメン!」
「ご飯に誘っちゃう?」
女性社員が口々そう言うと、背後から別の男性社員が声をかける。
「やめておいた方がいいですよ。彼の名前は
その男性は年若い優男いった感じの男性で、虫の一匹も殺せなそうな顔立ちをしている。
そして黒縁の眼鏡は、彼に誠実さを付け加えるようにすっぽりと収まっていた。
女性社員はその男性社員を見て、また騒ぐ。
その様子を吉良光は見ていた。
そしてこう思った。
(妻は失踪したんじゃない。殺されたんだ……)
そう思い、スマホを開く。
待ち受け画面には、彼とその奥さんであろう人物が映し出されていた。
(絶対見つけ出すからね……
時間は大分進み、その企業の退勤時間になった。
「では部長、私はコレで。」
そう言って光はすぐに帰宅準備をし、そそくさと出ていった。
「いや〜…光クンは最近帰宅が早くなったねぇ〜……」
「そうですね部長。前は残業なんていつものコトみたいな感じでしたもんね。」
部長と社員が帰宅する光について話し始める。
「そうですね……あ、知ってますか?光さんの奥さん、失踪したそうですよ。」
そこに黒縁眼鏡の、昼頃に女性社員に話しかけていた男性社員だ。
「あぁ、静流クンか……え!?そうなの!!そういやこの前探偵事務所に入っていく光クンを見たけど……」
「もしかして奥さん、浮気がバレて逃げたのでは!?」
部長と社員の声が大きくなる。
それを見て静流と言われた社員は微笑んでこういった。
「だとしたら彼女は人を見る目がない……彼ほど優しく誠実な男なんていないのに………」
その顔はどこか光悦とした表情を浮かべていた。
「あ……あぁ、そう……だね?ああ、そうだ!この要件すぐ終わらせなきゃいけないんだ……よし、
部長はつい、静流の様子にドン引きする。そしてそれを隠すかのように、先程まで話していた社員、浅瀬と仕事を分担する。
「え、ええ!はい!早くやっちゃいましょう!」
恐らく、浅瀬も彼に引いていたのだろう。
故に、彼らはそそくさと仕事に戻った。
一方その頃
都内のとある探偵事務所
椅子に寄っかかる人間が3人。
ここの探偵である
そして助手の
最後に光だ。
「で、妻に繋がる何かを見つけましたか?」
光は憔悴しきった様子でハナヤとソウヤに詰め寄る。
「ああ……見つけたんだけどぉ……だけどもぉ……」
ハナヤは何か気まずそうに口籠る。それを見かねたソウヤが話す。
「俺が言うよ、ハナヤ。まず、光さん、信じられないかもしれませんが、貴方の奥さんが前日にあった人間とのコンタクト……正確に言えばその"遺族"の方に出会いました。」
それを聞いた光は狼狽える。
「え……?彼女は前日に友人と遊びに行くって……てことは彼女よ友人が!?」
ハナヤとソウヤの二人は首を降る。そして意を決したように二人が口を揃えてこう言い放った。
「いいえ、不倫相手です。」
光はさらに狼狽えた。いや、キレたという方が正しいかもしれない。
彼は二人に絶叫に近い感じで言った。
「デタラメを言うなぁ!!」
そして掴みかかろうとする。が、ソウヤがある発言とともにあるモノを渡したことで彼はそれがデタラメではないことを理解する。
「コレ、その不倫相手がよく使用していたジッポーです。貴方の"ギフト"を使えば、すぐに私とハナヤの発言がわかるでしょう。」
光はそれを奪い取るようにして握る。そしてこう叫んだ。
「《ホット・バタード・ラム》!!」
すると、彼の脳内にある映像が浮かんだ。
それは恐らく、浮気相手と見られる男が自身の妻である由佳とホテルでいちゃついている映像だ。
光のギフト、ホット・バタード・ラムは、触れた人物、または人物の遺物に触れることでその人物の最も"楽しかった思い出"を除くことができる。
「………由佳……!」
彼の呟きに怒気が混じっていた。
「で、進展はこれくらいだけどどうする?新しい人生として由佳さんのことは忘れるか、それとも、犯人を探すか……」
ハナヤは静かに憤怒している光に話しかける。
「……犯人を見つけ出します。不倫していたとはいえ、愛していた妻を殺したヤツです。ろくでもないに決まっている。」
そう言ってお金の入った封筒を懐から取り出し、机にそっと置いた。
「コレは依頼料です。継続します。」
そう言って彼は事務所から出ていった。
夜道
光は苛つきながらも帰路につく。
そんな彼に話しかける人物が一人。
「おや、光さん。こんなところで合うとは珍しい。」
彼は声からすぐに誰か分かった。
「静流か……」
光は声のする方を見る。するとそこには左手に"女性の人形"を持った静流がいた。
光はつい、静流に質問をした。
「そうだな、ここで出会うのは珍しい……ところで、その手の人形はなんだ?」
彼の言葉に静流が答える。
「"同僚"ですよ。あまりにも美しかったのでつい……」
静流はあはは……と微笑む。それに光は恐怖を覚えた。
「?同僚ってどういう……」
聞かれた静流は微笑んだままこう返す。
「文字通りです。私のギフト《ドール・マイハウス》は、"私に人間の美と醜を教え、美しいと思った存在をコレに包むことで人形にします"。」
そう言って静流は懐から黒い布を取り出す。
「そして、貴方が14人目です♡」
そしてうっとりとした様子で静流は光に歩み寄る。
「なんだ……何を言っている?」
静流に光が質問する。
「言ったじゃないですか?"私は美しいモノを人形にする……"痛みはありません。ご安心を♡」
静流は至近距離まで近寄った。
「まて……近寄るな……」
光は恐ろしさのあまり後ろに下がる。
「イヤです♡貴方も私よコレクションに……」
しかし静流は急に駆け寄り、光に布を被せた。
そしてしばらくして、光は何も言えぬ人形になった。
「んん……あぁ……いい気分だぁ……♡美しいモノを手にした瞬間!コレが一番エクスタシィィィィ………」
静流は人形となった光を拾う。
「ご安心ください。私の部屋には汚いものはありません。貴方の"奥さん"とか、その"不倫相手"とか……ちゃァンと始末しましたから……♡」
そしてそう言い残し、その場を去る……彼は自分の帰路についたのだ。
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