10
久しぶりに夢を見た。
とても、悲しい夢を。
『真、さん…』
夢の中で、俺はただ真っ白な空間に立っていて、目の前に、しゃがみこんでいる誰かの後ろ姿があった。
すぐに真さんだとわかった。
『…ヤス』
久しぶりに、名前を呼ばれて、とても嬉しいはずなのに、その声は酷く悲しそうで、寂しそうで、話したいことは沢山あるのに、何も言葉が出てこなかった。
『ヤス』
『え…?』
振り向いた真さんの体から、突然、真っ赤な血が噴き出した。
『…ぁ……ぁあっ………』
『ヤス…!…痛いっ………助けて…!』
あの、事故の時と同じように、体中から血を流して、俺に、淡い黄色のマフラーを必死に差し出してくる。
『真、さん……』
『ヤ………ス……』
「っ…!!」
夢の中で、真さんがまた死んでしまう前に、俺は目を覚ました。
隣では、夢で見た顔が心配そうに俺を覗き込んでいる。
「…真、さん……」
「……っ…」
その戸惑ったような表情で、意識が現実へと引き戻された。
そうだ…今眼の前にいるのは、真さんじゃない。
「ごめんマコ…ちょっと、怖い夢を見ただけ」
「怖い夢?」
「うん。とっても、怖くて悲しい夢」
「…大丈夫?」
「……大丈夫。大丈夫だよ」
マコに話しているようで、俺は自分自身に言い聞かせていた。
マコと真さんは違う。
全くの別人だ。
一緒にしちゃいけないんだ。
そんなこと、頭ではわかってる。
でも…
夢の中の真さんが、言っていた気がしたんだ。
『忘れないで』って。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます