11 Mako.side


圭くんが、この家に住んでいいよって言ってくれた時から、何となくわかってた。




圭くんの心の中に、忘れられない人がいること。


幾ら圭くんのそばにいても、僕の圭くんへの想いも、圭くんの僕への想いも、その人には敵わないこと。






それでもいいと思った。


圭くんのそばにいられるなら。




仕方ないことだからって、諦めたはずなのに…








『真、さん…』




魘されて目を覚ました圭くんが僕のことをそう呼んだ時、僕はとても…とても悲しかった。








圭くんと、真さんは、きっと深い愛で結ばれていた。


それが、とても悲しい形で切れてしまった。


だけど…本当は、切れてなんかいないんだ。




圭くんと真さんは、まだ繋がってる。


永遠に切れない何かで、繋がっている。


僕は、それ以上に強い何かを圭くんと結ぶことも出来ないし、圭くん真さんの間にあるものを、切ることも出来ない。








僕の顔は、真さんにとても良く似ている。


瓜二つだ。


だけど、写真でしか見たことがないから、真さんの性格や話し方は、僕にはわからないし、僕の性格や話し方は、真さんには似ていないんだと思う。








僕が…顔だけじゃなく、僕の全部が、真さんになったら…きっと圭くんはもっと笑ってくれるだろう。


もしかしたら、僕を…愛してくれるのかもしれない。


圭くんの幸せを願うなら、僕は、僕を捨てた方がいいのかもしれない。






だけど…だけど本当は…








『マコ』








本当は、僕を、ずっとそう呼んでいてほしい。


愛してなんて、くれなくてもいい。




ただ僕を、マコとして、見ていてほしい。






そう思うのに、僕を真さんと呼んだあの日から、圭くんは少しずつこの家から、圭くんの心から、僕を…マコという存在を、なくしていった。




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