小癪

小癪

　ずるいと思った。

　私には限界があり、その中でしか表現をすることができない。

　ずる賢くなるべきかと自問自答した。

　私らしさを失ってもいいから必要であると言えるものなのか考える。

　ずるをするべきか悩んだ。

　悩んでいる時点で、ずるをするのに向いていないということがよく分かった。

　ずる、と、する、はよく似ている。

　濁点だけだ。

　だから何なのか、と問われれば何とも答えに詰まるものである。

　寂しい限りの言葉と言葉の争い。いや、諍いと言ってもいいかもしれない。

　私はこうして、言葉を紡ぐ、折りたたむ、公開する。

　まさに、小癪な言葉の使い手である。

「小癪についてどう思いますか」

「考えようですよ」

「小癪なんて言葉に囚われている間は楽しめないですよね」

「人生を、という意味ですか」

「そうですねぇ。はい、そういう意味です」

　どうしたら、その思考を捨てられるのか。

　考えは、間違いなく形を失ってから生まれている。

「不必要な思考が複雑である」

「何もかも、複雑です」

「健全な思考が必要だと思いませんか」

「変わりゆく思考を求めるしかない」

「煩雑な脳の構造を理解する必要があると思いませんか」

「情報が足りないわけです」

「何の情報ですか、すべてです」

「逼迫した思考の速度こそが重要です」

　僕は私の中の存在を探すしかないのです。

　感受性が詩を創り出してくれると思いませんか。

　変人の計画を生み出して下さい。

「立方体の思考が必要です。猫の才能を欲して下さい」

「金を積み上げて、私になっていくのです」

「あなたと私の間には、大きな闇があります。混然一体とした健全性」

「小さい癪」

　数字を下さい。

　私は合格です。

「太陽と星には、私がいない」

「この邪な考え方が私を創り出してくれたのだ」

「機雷が襲ってくる。私を捨て去ってくれ」

「精神的な漆黒が、私を救ってくれるのである」

「情緒不安定なんてピンク色でしかない。所詮はセックスの延長でしかないのだ」

「犬の可愛さが、一番裕福にしてくれる」

「本の中にあなたの影を見つけました。もう二度と見つけることはできないでしょう。赤く染上げて、白い眼球を持ち上げるふりをしてください。意味があると思っていらっしゃるようですが、不憫まみれでしかありません」

「シュールには、私が必要です。空腹のネオン街こそがラジオの本質だと思いませんか」

「敗走に、どのような意味があると思いますか」

「ピーナッツみたいな、卑怯な思考であると思いますね」

「敗走に、どのような意味があると思いますか」

「勝者にはできない行動であると考えます」

「敗走に、どのような意味があると思いますか」

「選択肢の一つです」

「敗走に、どのような意味があると思いますか」

「破れかぶれです」

「敗走に、どのような意味があると思いますか」

「敗北こそが、最高値だと思いませんか」

「敗走に、どのような意味があると思いますか」

「意味なんてないと思いますよ」

「敗走に、どのような意味があると思いますか」

「ほだされてはなりません」

「敗走に、どのような意味があると思いますか」

「照れ隠しでしょう」

「敗走に、どのような意味があると思いますか」

「どのように証明しますか」

「敗走に、どのような意味があると思いますか」

「意味合いについて、少しばかり考えてみましょうか」