脳筋の逆は筋脳?

マチュピチュ 剣之助

筋脳男の才能

「本当に太郎はいつも本ばかり読んでいるよね」

 美穂が苦笑いをして太郎に話しかける。二人はカフェに来ていたのであるが、美穂がお手洗いから戻ると、寸暇を惜しむことなく太郎は本を読んでいたのであった。

「あ、ごめん。続きが気になっちゃって・・・」

 太郎は慌てて本を閉じる。

「いったい、本をずっと読み続けて、何が楽しいの?」

 美穂はあきれるというよりも、不思議に思って尋ねた。美穂は、動画などはよく見るが、あまり本は読んでこなかったのだ。


「うーん、本を読むといろいろ学べるよね」

 太郎はつぶやいた。それは、太郎がいつも思っていることであった。幼いころから好奇心旺盛だった太郎は、本を読むことでその好奇心を満たしていた。

「それって、ネットで調べたり、テレビや動画を見るのと何が違うの?」

 美穂はまだピンと来ていなかった。

「ネットは知りたいことだけ知るのには良いけど、本だったら知らなかったことすら知らなかったものに出会える可能性もあるのが好きだな。あと、動画と違って、本を読むと想像力が膨らむし」

「ふーん」

 美穂はこれ以上尋ねるのをやめた。これ以上聞いても、到底理解できないと感じたからである。

「太郎って確かに本当に博識だもんね。みたい」

「きんのう・・・?ちょっとその言葉聞いたことないや。何だろう」

「筋脳!脳筋の逆で、筋肉まで脳みそになっているねってこと!」

 美穂はそう言って笑った。突然、筋脳という言葉が浮かんだのであるが、その言葉は太郎を表すのにピッタリだと思えてきた。


 実際に、太郎は体の全身が脳みそかと思うほどすごかった。突然消えた本屋を救い出すこともできたし、突然現れた怪しげな家の正体をつかむこともできた。さらには、突然失踪した、本屋の宮田さんを、数少ない手がかりをもとに一人で突き止めることすらできたのであった。そんな太郎であるが、ただ一つうといものがあった。

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脳筋の逆は筋脳? マチュピチュ 剣之助 @kiio_askym

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