過去の事件
愛染堂で魔方陣を描いた人物、西行代と在原康子の過去を調べるべく、僕はバウンティハンター協会のデータベースにアクセスしていた。
データベースは過去に起きた事件についての資料が網羅されており、利用者登録をすれば誰でも利用できる。
バウンティハンターの場合は、資格取得した際に自動でデータベースの利用者登録をされており、すぐに利用できる。金章学園のようなバウンティハンター育成校の生徒も同じだ。
「まずは、『西行代』から。――あった」
彼女の名前が載っていた記録は、あるいじめ殺人事件についてだった。
その記録によれば、ある女子中学生が同級生からいじめを受けており、いじめがエスカレートして橋から突き落とされ転落死した、というもの。その被害者の母親が、西行代なのだ。
あまりにも悪質すぎて文科省に対策室が設置されたほか、殺してしまった同級生達は少年院ではなく少年刑務所に収監する判決が下ったらしい。
「それにしても、この橋って……」
僕が引っかかりを覚えたのは、事件現場になった橋のこと。
確かここって、人の往来が激しい場所で、人を突き落とそうとすれば止めに入る人がいそうなんだけどな……。
まぁ、人がたくさん居たおかげで目撃証言には事欠かなかったみたいだけど。
「次、行ってみようか」
続いて調べたのは、『在原康子』。検索をかけてみると、該当した人物が見つかった。犯罪被害者として。
「これは、ひどいな……」
なんと、在原康子は性犯罪の被害者だった。
なんでも、22歳の青年『伊勢高男』から性暴力を受けていたらしい。後に彼は逮捕されたが、間もなく自殺してしまったそうだ。
そしてこの事件は、被疑者死亡という形で終わっている。
「でも、これらの事件がどう2人を結びつけたんだ……?」
もうしばらく調べてみると、なんと在原康子の名前が載っている書類がもう1つ見つかった。
「おいおい、ヤバすぎだろ……」
なんと、捜索命令が出されていた。それもただ家出した少女の保護というわけでは無く、ある事件に関連した重要保護対象として。
1年ほど前、ある夫婦が殺害されているのが見つかった。だが、夫婦の子供が見つからなかった。
その見つからなかった子供こそ、在原康子なのだ。
警察やバウンティハンターは、かなり緊急性を要する事件だとして、在原康子(やすこ)の捜索と保護を全国へ手配したのだ。
「それにしても、この死因で『殺人』だと断定されているって、やっぱりアレ関連かな」
夫婦の死因は『心臓発作』だとされていた。心臓発作は誰にでも起こりうるし、しかも夫婦の遺体からは外傷も毒物も一切検出されていない。
このような状況であれば不運な自然死という判断が下されるが、事件の報告書を読む限り明らかに殺人であると確信している。
となると、魔法の存在を感知しているとしか思えない。
「でも、彼女らの経歴と今引き起こしている事件、何の関係が……?」
わかったことが多かったが、肝心の彼女らの目的はわからずじまいだった。
やはり、直接聞き出すしか無いのか……。
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