入学
2月下旬。自宅にある郵便物が届いた。
「金章学園の封筒だ」
となると、受験結果だろうか?
ドキドキしながら封を開け、中の書類を読む。
『石田海 殿
本学園の入学試験を審査した結果、次のような結果を得られた。
・筆記:合格。
・実技(戦闘):バウンティハンターとして必要な最低ラインを十分満たしている。
・実技(捜査):荒削りで詰めが甘い部分が見受けられたものの、チームメイトと協力し、持てる力全てを使った上で論理的に真犯人を見つけ出したことに素質を認める。
以上の結果から、本学園ハンター科への入学を認める。
金章学園学園長』
「……ってことは、合格?」
そう。僕は晴れて、金章学園の生徒となる権利を手に入れたのだ。
その日の夜、両親が帰ってきてこの書類を見せると。
「すごいじゃないか、海!」
「春から今まで、頑張ってきた甲斐があったわね」
と、自分のことのように喜んでくれた。
4月の第1月曜日。この日が金章学園の入学式であり、僕の高校生活の幕開けとなる。
学園に入るとすぐ体育館へ案内され、そこで入学式を執り行う。
その後、各クラスへと移動し、オリエンテーションを行った。
「みなさーん、改めて入学、おめでとうございまーす。私、この1-Aの担任になる『北山 籐(とう)花(か)』です。よろしくお願いします」
この小柄で、丸顔で、眼鏡をかけた先生が、僕達1-Aの担任の北山先生。
話し方や仕草からおっとりした優しい先生とだと思われるが、先入観を持つのは危険だ。
そもそも、この金章学園はバウンティハンターやその関連の仕事を行っていた人が教師として赴任している。
そしてここはバウンティハンターとして第一線で活動する人材を育成する『ハンター科』。バウンティハンター用の道具や機材を開発する『技術科』や犯罪の捜査を専門的に行う『捜査科』とは違い、最も戦闘を行う学科なのだ。
当然、教師もハンター科にふさわしい経歴を持っているはずだ。
「ちなみに、教師になる前はバウンティハンターとして犯罪者を追いかけ回していましたよ」
ほら。やっぱり実戦経験者だった。
「ではオリエンテーションを始める前に、先生から大切なお話です。すでに知っているとは思いますが、皆さんが金章学園に入学した時点でバウンティハンターの仮免許が交付されています。いわばバウンティハンターの卵ですね」
もちろん知っている。学校説明会でその話を受けたから。
バウンティハンター育成校は、基本的に『バンバン経験を積め』という教育方針なので、とにかく実戦経験が重視される。そのための仮免許交付だ。
そして金章学園含め、バウンティハンターやその関連活動について公欠はもちろん、なんと単位も認められる。まぁ、バウンティハンター活動の単位が無くても卒業は出来るらしいけど。
そういうわけで、ここ金章学園ではバウンティハンター活動のやり過ぎを咎められることは無い。むしろ『ドンドンやれ』と言われる。
「仮免許が交付されたことにより、皆さんには犯罪者を逮捕できる権限が与えられました。ですが、決してふざけたり面白半分だったり、浅い考えで逮捕権を行使しないでください。
逮捕権は、他人の人生を簡単に変えてしまう権力です。場合によっては、周囲の人の人生も大きく変えてしまうでしょう。それほど大きな力を持ったということを常に自覚するようにしてください」
確かに、先生の言うとおりだ。
両親からたまに聞かされていたが、冤罪によって人生を大きく変えられたケースは数多くあり、中には冤罪をかけられて警察やバウンティハンター、さらには社会に対して恨みを持ち重大事件を引き起こしたケースもあるらしい。
つまり、一回の逮捕が大型犯罪者を生み出してしまう事もあるということだ。
そう思うと逮捕権を持つことが少し怖くなるが、それでいい。適度に恐怖を持ち、適切に使えるようになった方が健全だと思う。
「では真面目なお話はこれくらいにして、自己紹介にしましょうー」
オリエンテーションも終わり、今日の予定は全て終了。高校生活初の放課後となった。
「よう。俺のこと、覚えてる?」
「
自己紹介でそう名乗っていたはずだ。本名は『雨月
「俺さ、お前と実技試験の時に一緒だったんだけど、覚えてる?」
「ん? ――あー、そういえば一緒だったね」
確か、僕と一緒のチームになった男子で、『千里眼』の特技を持っていると言っていたはず。
「そ。実技試験の時はあんまり活躍できなかったけどさ、お互いに入学できてよかったぜ」
「本当にそうだよね」
「俺、捜査よりも戦闘とか追跡向きだからさ、もし一緒に仕事することになったらよろしく頼むよ」
「うん。こっちこそ」
後で知ったことだけど、実技試験で一緒のチームになった人とは学園生活で仲良くなることが多く、そのままバウンティハンターのチームを組んだり一生の友達になるパターンが多いそうだ。
もしかして、僕も雨月君とそういう関係になるのかな?
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