実技試験・捜査編
この事件捜査を模した実技試験には、A~Eの番号を割り振られた参考人が5人いる。もちろん、金章学園の在校生が参考人役をやっている。
僕達受験生は、この参考人を聴取して情報を集める必要があるので、こうして事情聴取をしているんだが……。
「やったのは俺だ! Bじゃない!」
「殺したのは私よ。Aではないわ」
なんと初っぱなから、自ら『殺した』と自白する人が2人。だが、双方とも意見が食い違っている。
「うーん……まさかこんな鬼門があったなんて……」
「まあ、まだ2人だし、全員に話を聞いてみようよ」
このチームでは僕以外で唯一の男子が頭を抱えたが、僕はとりあえず全員の話を聞いて情報を集めるよう促した。
そして他の参考人3人の話は、こんな感じだった。
「被害者はトラブルメーカーで、無意識に恨みを買ってしまうことがよくあったね」
「AとBはお互いに気になっているそうです。両片思いってやつでしょうか」
「事件があった夜、Bが現場にいたような……」
さて、これらの証言から察するに、Eの人の証言からBが犯人の可能性が高いんだけど……本当にこのままBが犯人だと決めてしまっていいんだろうか?
他に証拠がないか現場を探し回っている中、監視カメラの解析を行っていた女子がやってきた。
「カメラの解析が終わりました」
というわけで、監視カメラを確認する。
その結果、AとBは事件とは無関係であると判明した。というのも、監視カメラの記録からアリバイが判明したからだ。
ではなぜ互いに『自分が犯人だ』と主張したかというと、Aはネクタイピンが壊れてしまい、落ちたネクタイピンを拾った。そのとき、ネクタイピンに反射した光をBが目撃したため、『凶器を持っている』と勘違いしたらしい。
逆に、Bは殺人犯では無く第一発見者だった。ただ、死体を見たときにショックで部屋を飛び出してしまい、その瞬間をAに見られたため、AはBを殺人犯だと思い込んだ。
また、AとBは、Dの証言からお互いに想いを寄せていたため、両者とも自分が罪を被ろうとした、というわけだ。
では、誰がどのように被害者を殺したのか?
「これ見てください。ナイフが宙に浮いています」
「ってことは、『念力』とかそれに似た特技だろうな……。だが、どうやって調べる?」
真正面から『特技は何だ』と聞いても、嘘をつかれるかはぐらかされるか。
全員が頭を悩ませそうになったそのとき、監視カメラの解析を行わなかった方の女子が口を開いた。
「あたしさ、『読心』の特技を持ってて、ある程度相手の心の中がわかるんだけど……相手の心の隙を突かないといけないんだよね。心の隙を作れる人、いる?」
「俺は無理だな。『千里眼』って特技で遠くを見通せるんだが、そういう心理戦には向かないな」
心の隙、か。おそらく、僕には出来るだろう。一応準備しておいた物が役に立つときが来そうだ。
「僕なら多分、出来ると思う。でも、一瞬の勝負って事に注意して。出オチみたいな作戦だから」
「わかった。君のこと、信じるよ」
昼休憩をはさみ、私達はEの参考人がいる取調室に足を運んだ。
「失礼します」
「はーい……って、え?」
Eが困惑の表情を浮かべている。それもそのはずで、今部屋に入ってきた女子2人のうち、一人は知らない女子だから。
Eは扉の上にあるランプに目を移した。そのランプは、受験に不正があると見なされると点灯するシステムになっており、強制的に試験終了になる。
でも、点灯するはずが無い。なぜなら、Eが知らない女子である私は『石田 海(かい)』が特技で女子に変身した姿だから。
一応、女子の制服と下着を持ってきてよかった。『下着ぐらいどうでもいいだろ』って思う人がいるかもしれないけど、下着を替えるのと替えないのとでは自分の心の持ちようが全然違う。
「単刀直入に聞くね。あなたの特技は何?」
「え、え……」
Eは全く言葉にならない声を発したが、それだけで十分だった。
「わかったわ。こいつの特技は『磁力』。金属限定で手を触れずに動かすことが出来る特技よ」
「そっか。他の4人は殺害方法とは全くつながらない特技だったから消去法でこの人だとは思ってたけど、裏が取れたね」
すると、Eは観念したように白状した。
「……ああ、正解だよ。自分があいつを殺した。あいつ、面白半分に自分の大切なデータを消去しやがってさ。腹が立って思わず殺してしまった。
まぁ、疑われそうになったBには申し訳ないと思うけどね。偶然そこに居ただけだし」
というわけで、犯人はEということで結論を出し、レポートを提出した。
欲を言えば殺害動機となるデータを消去した証拠と復元をやりたかったけど、そこまでコンピューターに詳しい人材が班にいなかったので、諦めてしまったことが心残りだけどね。
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