第34話 それから【最終話】
「愛梨沙! 新しい魔法を思いついた時はオレかイツキの前で説明してから使えとあれほど言ったよな?!」
「……だって……枯れそうだったし早くやらないといけないと思って……広範囲じゃないし……」
「ダメだ! まず連絡して来い! さっき声が震えてるからおかしいと思ってテレポートして来たらコレだ! 嘘ついても無駄だぞ。愛梨沙の心の声は聞こえてるし、おふくろから話も聞いてんだから」
昼休み、ニックはいつも魔道具で通信してくれる。今日は余計な事してないよな? と聞かれて口篭ったら速攻でニックがテレポートして来た。
そして、やらかした事がバレて叱られている。私は聖女ではなくなり無限の魔力はなくなった。それでもかなり高い魔力があるみたいで、思いつきで魔法を使ってしまう。
この世界では見た事も聞いた事も思いついた事もないような魔法を作り出してしまう私は、いつも旦那様に叱られています。
あれからすぐ、私はニックと結婚した。結婚式は、なんかもう色々大変で。ニックと私は魔物を消した英雄。だからすっごい人が集まったよ。貴族もいっぱい来たから、魔法で顔や名前を記録して覚えた。
神様はイツキと名乗って生きてる。神様、名前ないんだって。だからっておじいちゃんの名前はどうかと思う。そう言ったら「樹は良い男なのじゃろう?」と笑ってました。今は元神様だし、一つの国に留まるのは良くないからと色んな国を回ってる。イツキの取り合いが起きそうなもんだけど、そこは腐っても元神様。無限の魔力で、魔法を駆使して頑張ってるみたいよ。信用出来ない国は実体化する幻影を送って監視カメラで監視するんだって。「ねぇ、その魔法ほとんど私が教えたモノだよね?!」そう言ったら、ニヤって笑ってた。
その時のイツキの笑顔は、おじいちゃんに似てた。おじいちゃん、今頃おばあちゃんと仲良くやってるかな。
以前作った通信魔道具はお互い持ってるから、なんだかんだ毎週のように連絡を取ったり突然我が家に現れて一緒にご飯食べたりしてる。
っと、いけない。今は謝罪が最優先事項だ。ニックが睨んでるから、私が余計な事を考えてるのは多分バレてる。
「……すいません。思いついてやっちゃったけど、ニックに叱られると思って誤魔化そうとしました。本当に反省してます。ごめんなさい」
「ったく、今回は植物を育てる魔法だし目立たなかったから良いけどよ。こんなの、誰だって欲しがる魔法だ。表沙汰になったらまた愛梨沙が狙われるだろう。この魔法はイツキの手柄にする。もう連絡を取った。今すぐ城に行くぞ! 良いな?!」
「いつもすいません……!」
イツキは、私が思いつきで使う魔法を精査してくれる。人に教えて良い魔法、隠した方が良い魔法、無茶苦茶だと溜息を吐いてなにやら話し合いを開始する魔法、叱ってすぐ封印する魔法がある。
あと、イツキしか使えない魔法として広める場合もある。神様ではなくなったとはいえ、信仰心の高い人達はイツキの言う事は大抵信じてくれる。
ニックとイツキに叱られて、国王陛下に溜息を吐かれて、団長さんやダリスさんに笑われて、家に帰ってきた。
有用な魔法だから、広める方向で話を進めるそうだ。もちろん、イツキが思いついた事にしてくれた。
ニックはもう少し仕事があるらしいから、食事の準備を終わらせてからパソコンに向き合う。
「成長促進の魔法、担当はイツキと……」
パソコン、作ったの。
私しか起動できないようにして、普段は無限収納に隠してある。元々デジタルが得意だったから、パソコンを作ってから情報の整理が簡単になった。
作った魔法を全部記録して、場合によってはプリントアウトして配る。
パソコンの壁紙は、家族の写真だ。
おじいちゃんとおばあちゃんは若いけど、そこは私の作ったイメージだから許してほしい。
写真の中の家族はみんな笑ってる。
もう会えないし、私の存在は消えちゃったけど……おばあちゃんだけは、私の事を覚えている。
それで良い。ニックと暮らす日々は、とても幸せだ。ニックのいない馴染みのある世界と、ニックのいる知らない事だらけの世界なら、私は後者を選ぶ。
私はこれからも、この世界で生きていく。
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