第31話 黒い繭
ルネさんがテレポートで聖女様の所に連れて来てくれた。ニックからの依頼を完遂して、必死で探してくれたそうだ。
飄々としてるけど、もしかして怪我とかしてるんじゃないかな?
私はルネさんに治癒魔法をかけた。掛ける一億くらいすれば瀕死の人も癒せたし、念の為に掛ける一億しておいた。ルネさんは驚いていたけど、ありがとうとお礼を言ってくれた。
私達の目の前には真っ黒な繭がある。禍々しい気配はするけど、どこか懐かしい。中に人がいるのはなんとなく分かる。
「これが……聖女様?」
魔物が繭から現れるから、間違いないだろう。どんどん現れる魔物は、ニックとルネさんに瞬殺されてる。私が祈ると、魔物が全て消えた。
「ルネ、よくこんなとこ一人で来たな」
「ニックが魔物を減らしてくれたからね。少しくらい愛梨沙様の役に立ちたいし、本気で頑張ったんだよ」
「ルネが本気を出せば……辿り着けるか。助かった。ありがとう」
そう言ってニックはルネさんに頭を下げる。ニックはとても礼儀正しい。そんなところも、素敵だと思う。
……あ、やべ。また聞こえてるわ。ニックの耳が真っ赤だ。
「愛梨沙、神様を呼んでくれ」
顔はキリッとしてますけど、まだ赤いですよ。もーニックさんってば可愛いんだから!
「愛梨沙……」
あ、やべ。あんまり揶揄うとまた怒られちゃう。ルネさんもいるし、さっさと神様を呼ぼう。
「神様、カモーン!」
「早いのぉ。もう着いたのか?」
「……こんなに軽く……神様を呼ぶなんて……」
「ニック、此奴は誰じゃ」
「ルネです。オレの友人ですよ。信用して問題ありません」
「そうか。なら良い」
「……こんなに軽く……神様がニックの言葉を信じるなんて……」
「いちいち驚いてる暇はない。神様、この繭が聖女様ですか?」
「うむ。間違いない。我は何も出来ぬ。愛梨沙よ、どうにかならぬか?」
「多分、今の聖女様は憎しみで溢れてる。まずは、安心魔法を使うよ」
安心×無量大数!
何度も何度も、安心魔法をありったけ倍掛けする。何度目かわからなくなった頃、繭が割れた。
「うわ。ズタボロじゃん。癒しを掛けるね」
癒しの魔法と一緒に修復の魔法もかける。そうするとボロボロの服も綺麗になるのだ。あと浄化もかける。ちょっとややこしいけど、計算式を掛け合わせるように魔法をイメージすれば一気に魔法を組み合わせられる。
プログラムを組むようにイメージすると、とても複雑な魔法もなんとか使える。使う前に紙にひたすら書く必要はあるけどね。
パソコン欲しいなー。あ、今度パソコン作ってみよう。そんな事を考えてると、聖女様の服が修復されて身体の傷も癒えた。身体中、酷い傷だった。神殿許すまじ。
聖女様は傷が癒えても、安心魔法をかけても怯えたまま黒い靄を出し続けている。私達の姿が目の前にあるのに見えてない。頭を掻きむしりながら泣いている聖女様は小さな声で呟いた。
「……嫌だ……怖い……助けて樹さん……」
とても聞き覚えのある声だ。聞いた事のある名前を呟く女の人は、とても見覚えのある姿をしている。
「おい……この人は……」
「愛梨沙……様?」
繭から出て来た聖女様は、私にそっくりだった。
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