第22話 初めての告白

『やばっ、聞こえてたかも』


『聞こえましたよ』


ひぃ!

ニックさんがニコニコ笑ってる!


ダリスさんと団長さんが不審がってるよっ!

あぅ! 神様も見てる!!!


パニックになった私は、ダリスさんと団長さん、それから神様の時間も魔法で止めた。


「なっ……! なにやってるんですか?!」


「だって恥ずかしいんだもん!」


「団長やダリスはともかく、なんで神様まで時間が止まるんですか!」


「知らない! 分かんないもん!」


「……はぁ。じゃあ、今動けるのはオレと愛梨沙様だけなんですか?」


「……たぶん」


「それで、どうしてこんな事をなさったんです?」


「だから! 恥ずかしかったの! 心を読めると知ってドン引きするダリスさんの気持ちが分かりました。めっちゃ恥ずかしい……」


「そう言われましても、オレと愛梨沙様は喋らなくても気持ちが伝わってますよね?」


『こんなふうに。聞こえますよね?』


『聞こえますぅ……!』


「ダリスは無理でしょうけど、オレは愛梨沙様の気持ちが分かると嬉しいですよ。だから、オレの気持ちが知られても構いません」


「私は構います。だって……さっきだって……!」


「ああ、オレのことを気に入って頂けたのですか?」


くっ……!

余裕のある笑顔がムカつく!


けど、嫌いになれない。くっそ、腹立つ!

十八年間生きてきて……こんなに人を好きになった事ないと思う。私はあんましモテなかったし。大学に行けば彼氏くらい出来るかなって思ったのに、全く出来なかったし。


「十八?! ま……まさか……愛梨沙様は……十八歳なのですか?」


「また聞こえてました。あぅ、恥ずかしい。そうです。私は十八歳です。二ヶ月後に十九歳になる予定でした。こっちの暦と、私がいた世界の暦が違うから分からないけど、本当ならもう十九になってるかもしれません」


「ななな……本当ですか?」


「本当です」


『子どもだと思っていたのに……オレと同い年かよ! ……やべ。子どもじゃないなら別に……』


「別に、なんですか?」


「……オレの心の声、聞こえました?」


「はい。バッチリ。一体私を幾つだと思ってたんですか?」


「十二……三歳かと……」


「ちょ! そんなに子どもじゃないです! 私の国は、十八歳で成人なんだからもう大人! お酒はあと一年くらいはダメですけどね。そんなに子どもっぽいですか? 地味にショックなんだけど!」


「も、申し訳ありません!」


「ってか、ニックさんも十八なんだ」


「はい。明日十九になります」


「へー、私も二ヶ月後に誕生日だったから同じくらいかもね。もう、誕生日も分かんないけどさ」


魔法で調べた結果、この世界のカレンダーは私が知るものとは違っていた。一年が十二ヶ月じゃないし、一か月も三十日前後じゃない。


私は自分の誕生日が分からなくなってしまった。


「なら、愛梨沙様の誕生日を決めましょう。毎年、同じ日に祝うんです」


「こっちにも誕生日を祝う風習があるんだ」


「ええ。家族や恋人と穏やかに過ごす人が多いですね」


「ニックさんの誕生日は、明日?」


「はい」


「なら、私も明日が良い」


「分かりました。明日、愛梨沙様の誕生日を祝いましょう。それから、愛梨沙様」


「なんでしょう?」


「愛梨沙様は、恋人や夫など、特別に愛し合っている方はいらっしゃったのですか?」


「ううん。残念ながらいませんでした。けど、いなくて良かったかな。おじいちゃんみたいに、悲しませちゃうもの」


私はニックさんにおじいちゃんの話をした。おばあちゃんを死ぬまで探してた事、私がいなくなれば、両親はおじいちゃんと同じように私を必死で探すだろう。それが一番悲しい事。誰にも……神様にも言えなかったけど、ニックさんになら言えた。


「……愛梨沙様……」


「ごめんなさい。こんな話して」


「悪いのは我々です。聖女様を無理矢理召喚していたなんて……! オレは愛梨沙様の護衛騎士なのに……貴女をお守り出来なかった」


「守ってもらいましたよ。ニックさんがご飯をくれたり、話しかけてくれたりしたから私はなんとか頑張れたんですから」


「それでも……オレは……」


ニックさんが、また手を握りめようとしたから手をぎゅと握った。


「愛梨沙……様?」


「すぐ手を握って血を出すの、やめて下さい。心配だし」


「すいません……」


「なんで、ニックさんは強く手を握るんですか?」


「オレは元々、我慢強い性格じゃねぇんです。けど、騎士の仕事は我慢しなきゃいけない事も多い。愛梨沙様の護衛を始めてからは、特にそうです。だから……つい。けど、もうしません。貴女を不安にさせたくないから」


「ニックさん……」


「どうか、ニックと呼んで下さい。愛梨沙様……オレは貴女の事を好ましく思っています。好きか嫌いかと言われたら、好きです。さっきまではその……もっと幼いと思っておりましたので……ですが……同い年なら……どうか、オレとお付き合いして頂けませんか? 貴女の支えになりたいんです。さっきダリスの話をする貴女を見ているとモヤモヤしました。オレは……母がずっと病気で看病していたので……女性とお付き合いした事はありません。頼りないかもしれませんけど……オレを愛梨沙様の恋人にしてくれませんか?」


初めて告白された。こんなにかっこよくて、優しい人が真っ赤な顔で恋人になってくれって頼む姿は……めっちゃ萌える。


答えはもちろん、イエス一択だった。

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