第19話 アリサの養育

「ねぇ、神様って嘘つける?」


「……あまりしたくないが、できなくはないの」


「シスターコリンナの魔の手からアリサちゃんを守る為なら嘘つける?」


「いくらでも嘘をついてやるわい」


「よっしゃ! なら、私が街に出たのは神様が呼んだって事にしてよ。あと、アリサちゃんを誰かに保護して貰うことって出来る? 今なら神様パワーでシスターコリンナを誤魔化せるだろうし。神殿は絶対に駄目だよ!」


「……それは、我ではなくニックかダリスに聞け」


「ニックさん、ダリスさん、誰かアリサちゃんを養育できる人っていますか?」


「団長かな?」


「そうだな。団長なら間違いない」


「団長さんってどこにいます? 今なら時が止まってるし、ここに呼んでも良いですか?」


「団長は、多分ご自宅にいらっしゃると思います。今日は、非番でしたから」


「お家、分かりますか?」


「はい。分かります。愛梨沙様の頭の中に地図をお送りします。見えますか?」


「わ、凄い! 見えます! でっかいお屋敷ですね」


「団長の家は、公爵家ですからね」


「わぁお! 貴族、凄い! えっと、団長さんってこの人? 庭で剣持ってて、どっか行こうとしてるけど」


「そうです。恐らく、愛梨沙様が神様を呼ばれた事に気が付いたのでしょう。様子を見に行こうとしていますね」


「なるほどね。ねー、神様、結界に団長さん呼んで良い? 見た感じ周りに人もいないし、時を進める前に同じとこに戻って貰えば大丈夫じゃない? あ、ニックさんとダリスさんはニックさんの家に送るから。幻影、ニックさんの家に入れちゃったし」


「ニックとダリスが良いなら、我は構わぬ」


「オレは構いませんよ。団長なら、信用できますから」


「俺もそう思います」


二人が許可してくれたので、サクッと団長さんを結界に呼ぶ。念のため、団長さんの現在位置が分かるように幻影を固定させて置いておく。団長さんが同じ位置に来たら、自動で消えるように設定したからこれで魔法を維持する為に気を張る必要はない。


プログラムを学んでいたせいか、自動的にできそうな事はオートモードになるように魔法を組む癖がついた。プログラムと違って、イメージするだけで良いからめっちゃ便利だ。プログラムって、言語によってできる事違うのよね。それが面白いんだけど、なかなか上手くいかない事もよくある。魔法は、そんな事なくて私がイメージできたら上手く動く。


どうせなら、上手く動かなくて試行錯綜する楽しさも欲しいけど、それは我儘だよなー。


魔法はテストもいらない。便利だけど、面白くない。ま、今は命かかってるからね……イメージさえ出来れば、失敗がないのは本当にありがたい。


「団長さんの時間、動かして良い?」


三人が頷いたので、団長さんの時を動かす。


「なっ……ここはっ……?!」


「団長。こちら聖女の愛梨沙様です。で、こちらは神様です」


呆然としている団長さんに、ニックさんとダリスさんが説明してくれる。時間は止まってるしゆっくり説明してくれたら良いと思ってたけど、団長さんはニックさんとダリスさんの話を受け入れてくれた。二人が言うなら、信じようと言ってた。騎士団って凄いなって思ったよ。信頼しあってる上司と部下、尊い。


団長さんは、あっさりアリサちゃんの養育を受け入れてくれた。

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