第13話 規格外
「あれは、友人のダリスですね。なんと言っているかわかりますか?」
「分かりますよ。音声出しますね」
『おい! ニック、これどうなってんだ! おい! 返事しろよ!』
「ありゃ、神様、ニックさん、この人も結界に呼んでいい? あんまり騒いでると神殿の奴らに目をつけられるから。あと、ずっと幻影操るのもキツい。適当に移動させて消すからね」
「構わぬ」
「すいません。お願いします」
ニックさんと神様の許可が取れたので、ダリスさんを結界に呼ぶ。幻影を作って、ニックさんとダリスさんはその場を離れさせた。不自然にならないように、ニックさんのお家まで歩かせて、サクッと幻影を消す。あ、もちろん扉は開けてないよ。開けるように見える幻影は出したけど。でないと、お母さん起こしちゃうじゃん。それから、まだ土下座してるシスターコリンナが見てないうちにアリサちゃんの幻影も街に紛れさせて消した。
「……ここは、一体……」
私が幻影を動かしてる間に、ニックさんがダリスさんに説明してくれた。
「は……か、神様?! し、失礼しました!!!」
「構わぬ。のうニックよ。ダリスは信用できる人間かの?」
「俺が一番信用している男です」
「そうか。ならば説明しようかのぉ。あまり長くなっても怪しまれるしの」
「んー……なら、時間でも止まれば良いんじゃない。時間よ、止まれっ!」
プログラムでタイマーを止める感覚で魔法をする。コツが分かると、魔法は楽しい。テレビに映してる街中を確認すると、みんな止まってる。
「よっしゃ。これでゆっくり話せるよ! 神様!」
「本当に規格外じゃのう」
ニックさんとダリスさんは固まってる。
「あ、あれ? ニックさんとダリスさんは動けるつもりで魔法をしたんだけど! 神様! なんでよ!」
「知るか! 時を止めた聖女など初めてじゃ! 其方がかけた魔法であろう! どうにかせい!」
「あ、あの。大丈夫です。オレは動けます」
「お、俺も動けます!」
「良かった! ねぇ神様、この魔法どのくらいもつかなー?」
「聖女の魔力は無限じゃからのぉ……。其方が魔法を停止するまではこのままじゃろ」
「いえーい! じゃ、あのシスターぶん殴って良い?」
「やめよ! 聖女なのだからもっとこう……」
「人を慈しめって? 無理よ無理。ぶっちゃけ、ニックさんとアリサちゃんくらいよ。この世界で大事だと思えるの。神様だって、敵かもね。アリサちゃんを助けたくて呼んだだけ。だってあんなヤバい奴らが信じてる神様なんて……ロクなもんじゃないと思わない?」
「……何故、こうも疑り深い者が聖女になっておるのじゃ……いや、だからこそ。か。愛梨沙でなければ、今頃この街は壊滅しておったじゃろう」
「それ、どういう事よ。簡潔に、分かりやすく説明して。あ、長くなるなら座ろっか。どーせ時間は止まってんだしゆっくりしよーよ。ご飯はないけど、ソファを出すよ」
魔法でソファを作って、神様とニックさんとダリスさんを座らせて自分も座る。あー、これ座り心地良いわぁ。
「お茶とか出せなくてごめんなさい。なんでか分かんないけど、魔法で食べ物出せないのよね。水かお湯しか出せないの」
「食事は生きる糧じゃからのぉ。魔法で生み出せんのじゃ」
「えー癒しの魔法とかあるのに?」
「癒しの魔法で飢えは癒せても、栄養は取れておらぬからの。其方は聖女だから死なぬが、通常の人間なら飢え死にじゃ」
「え、じゃあ私がアリサちゃんにした魔法は……無駄?」
「癒しの魔法を駆使すれば、一カ月くらいは飲まず食わずでも大丈夫じゃ。だから意味はある。しかし、あまり長くなると良くないの」
この世界に来てからどれくらい経つか忘れちゃったけど、間違いなく一カ月以上は経ってる。
「ふーん。だから私、痩せちゃったのか。ま、ダイエットになって良いよね」
「良くないですよ! 神殿の奴ら……許せねぇ。どうして……教えて頂けなかったんですか! 今日だってお一人で脱走なさって……! 言って頂ければ……いくらでもお助けしたのに……!」
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