第3話 祈り方はわかった

私はあれから、シスターコリンナの前で祈った。お兄さんが教えてくれた通り、跪いて手を組み、魔物の減少を祈った。すると全身が光り、シスターコリンナは大喜びした。


たくさんの人が来て、優しいお兄さんは追い出された。


それからは、気持ち悪い人がいっぱい来て、シスターコリンナは私を自慢した。


話を聞くと、歴代の聖女の中でいちばん早く祈ったとか、シスターコリンナの指導力の賜物だとか言ってた。


シスターコリンナに指導力なんてないわよ。あのお兄さんが教えてくれなきゃ、きっと今頃また……。


背中が冷たくなった気がしたが、無理に笑って周りを観察した。シスターコリンナは、だいぶ偉い人みたいだ。だけど、一人だけ。シスターコリンナが敬語を使う人がいた。


それが、神殿長と呼ばれているおっさんだ。


この人がこの場でいちばん偉い。それならこの人と話すのはアリではないか。そう思った。


けど、私は失敗した。


神殿長は、普通に私と話してくれた。お腹が空いたと言えば、食事もくれた。


だけど……その夜。


ラスボスが現れて散々痛めつけられた。私とだけ話せ、恥をかかせるなと言われた。なんだかよく分からない魔法を使われて、結界の中は見えないし聞こえないから誰も助けてくれないと笑っていた。それから、ずっと痛かった。治されて、痛めつけられて、また治された。


シスターコリンナの気が済むまで、私はずっと痛い思いをした。


だから……決めた。シスターコリンナの言う事を聞くフリをしようと。


こんなとこ、さっさと出て行くに限る。けど、私には逃げる手段がない。今は、情報を集めないと。


それから、シスターコリンナの言う通りに過ごした。誰とも話さず、彼女の言う事に従う。


しばらくすると、シスターコリンナは私の洗脳に成功したと笑って自慢していた。


「さすがシスターコリンナ!」


はい。今日もおべっかタイムですよ。洗脳ねぇ。そりゃ、こんな異常な状況で暴力振るわれたら言う事聞いちゃうわよね。ぶっちゃけ、私もおじいちゃんの教えがなきゃシスターコリンナの言いなりだったと思う。


この人、機嫌が悪いと分かりやすいんだよね。


機嫌が悪い時は、話しかけず刺激せず、ひたすら祈るフリをする。なんかよく分からないけど、魔物が減ったと喜ばれているらしい。


マジ意味わかんねー!


歴代の聖女の中でいちばん優秀とか言われても嬉しくねーし。誘拐犯だろお前ら。


まぁ、そんな事言ったら鞭が飛ぶから言わないけどさ。


ご飯くれないのよ、この誘拐犯達。


聖女は死なないから大丈夫なんだと。ざけんな。お腹は空くんだよ!

過去の聖女は祈りを拒否して骨と皮だけになっても生き続けたとか言われた。えげつねぇ! 食べなきゃ痩せるじゃん! 死なないって言われても苦しいじゃん!


だがしかし、いちいち口答えしたらめんどくさい。それに、私が言う事を聞くと思い込んでるから結構ペラペラ色々話してくれるし、たまに神殿長が水をくれる。


水だけか!

そう思う時もあるけど、感謝して頂いてる。


そしたら、神殿長が私を喋らせようとする。けど、シスターコリンナにバレたら困るから絶対喋らない。大抵すぐシスターコリンナが来て、私が喋ってないと分かると喜ぶ。


すっごくめんどくさいけど、今はこの人達に従うフリをして、脱出する機会を探るんだ。

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