土台あってこその筋肉活用法

月乃兎姫

第1話

 筋肉はすべての問題を解決する――と、時折ネット界隈では言われているそうな。本当かどうか、たぶん嘘だろうと思う。

脳筋のうきん】という言葉もあるが、これは基本的に正面突破や策を用いない正攻法、言わばただの力押しのことである。


 よくよく考えてみれば、ナンバリングRPG作品においても魔法やら特技やらが派手さを見せつける一方、最終的には【攻撃する】という単純かつ脳筋仕様が一番強いとも言える。しかし、それはそれまでの経験ありきにほかならない。


 結局のところ、筋肉と言うのは土台となる骨あってこそ成り立ち、筋肉そのものだけでは重く、その衝撃で自らをも傷つけることになってしまう。


 創作も似た性質を持ち、いくら表面的な物語性や奇をてらった演出と伏線を用いても、単発では受け入れられても継続はし得ない。文章や表現に対し、肉付きをすることで、初めて筋肉となるものだ。


 それにはまず土台となる骨格……小説で言えば、起承転結であり文章における基礎であり、また独自性及びリズムである。


 果たして今の作品にこれらが備わっているだろうか? 私はそう聞かれれば、「それは貴方も知ってることだろう」――と、質問を質問で返す。これは別にふざけているわけではなく、そんな質問をしている時点で、己も疑問を持ち、相手に質問と言う体裁で投げかけているにほかならないからだ。問うてる時点で既に答えは出ている。


 ハッキリ言えば、いくら整っている文章、また文章構成や表現においても、コンテストや公募で受賞することは良くあることだが、1巻2巻の単巻打ち切りになる作品の大多数にもこれは当てはまるのだ。


 そこには評価する側の資質と一定のルールが足枷となり、それ以外の優れているものであっても排除するからにほかならない。でなければ、自らが選んでいる作品が悉く打ち切りになるのを、甘んじているのは説明がつかない。


 理解してなお、人は筋肉と言う鎧を身に纏うが故に、自らを傷つけている――これが今の出版業界全般にも当てはまることは言うまでもない事実である。

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土台あってこその筋肉活用法 月乃兎姫 @scarlet2200

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