第5話

 俺たちがめざしていた目的地、それは家から少し離れたところにある大きなショッピングモールだ。


「そういえば買い物デートって聞いて俺が荷物持ち係になるんだろうなぁって思ってたんですけど…。荷物、俺が持ちますよ?」荷物を何故か持たせようとしない先輩に疑問を抱いた俺はそう問いかける。


「自分で持つから大丈夫だよ。だって彼氏だけに持たせて自分は買い物楽しむなんてなんか申し訳ないじゃん。…でも君と手を繋ぐために片手を空けたいから…お願い出来る?」断る理由もないし俺も月先輩と手を繋ぎたいと思い、俺は先輩の荷物を1つ持つ。


「そういえば月先輩、付き合う前はよく荷物持ちとして俺を呼び出してましたよね?」ふとその事を思い出して当時はどうして俺に荷物持ちをさせていたのかその理由を聞いてみる。


 その問いに先輩は「もしかして根に持ってる?昔は昔、今は今ってことで許してくれないかな?…まぁ、理由としては冬雪と一緒にいる時間を増やしたかったからで…。」最後の方はすごく小さな声で喋っていたからあまり聞き取れなかったが先輩が照れている感じ、可愛い理由なのだろう。


 そんな話をしながら歩いていると俺はとある店が目に入る。


「あっ、先輩。俺ちょっと買いたいものがあるんですけど…ここで待っててもらっていいですか?できるだけ早めに買ってくるんで。」そう言って俺は少しの間先輩を待たせてその店で買い物をする。


「お待たせしました!はい、これ月先輩にプレゼントです。今日一緒に遊んでくれたお礼にと思い…。」そう言って俺が渡したプレゼントはネックレスだ。それも俺とお揃いの。無難な選択だが先輩なら喜んでくれるだろうと思っている。


 プレゼントを渡してから数秒の間先輩は固まっていた。「あのぉ、先輩?」そう言って俺は先輩の顔の前で手を振る。


「はっ!ごめんね嬉しくて固まっちゃってたよ。このネックレス、冬雪とお揃いだよね?わざわざこんな可愛いの選んでくれたんだ。嬉しいなぁ…えへへ…。」すると先輩はプレゼントを渡してからモジモジし始める。


「どうかしましたか?」その問いに対し、先輩は少し恥ずかしそうにわがままを呟く。


「えっと、その…プレゼントを貰ったついでに1つ、私のわがままを聞いてくれないかな?」ふむ、先輩のわがままか。暴走さえしなければある程度聞くつもりではいるが…。とりあえず聞いてみるか。


「まぁ、どんなお願いかにもよりますけどある程度なら…。」俺がそう答えると先輩は目を輝かせて言う。


「私の事、月先輩じゃなくてルナって呼んでくれないかな。とりあえず今日だけでいいからさ!」

 それぐらいのお願いならいくらでも聞こう。…暴走しなくてよかった…。


「分かりましたよ。…ルナ。」こうして面と向かって先輩を呼び捨てで呼ぶのは俺が告白した時以来か…。ちょっと恥ずかしいな。


 名前を呼ばれて喜んでる先輩もやっぱり可愛いな。なんて思っているとまたもや先輩の暴走が始まる。

「えへへ。その、もう1回呼んでくれない?」俺が名前を呼ぶのを渋っていると先輩が駄々をこね始める。

「ねぇ、もう1回!もう――――――」何度も自分の名前を呼ばせようとする先輩の言葉を遮り俺は言う。


「そろそろ周りから痛いカップルだって思われるので辞めましょう。続きがあるとするならば帰ってからで…。」そうしないと周りからの視線で俺が恥ずか死んでしまう…。


「私は別に気にしないけど、冬雪が気にするなら仕方ないか。じゃあ帰ってからちゃんと呼んでよね!約束だからね!」その言葉に対し俺は渋々首を縦に振り、「ルナが恥ずかしがってやめて欲しくても、絶対に辞めないからね。」と呟いた。



 買ったものを家に置いてくるために俺たちは各々の家に帰る。俺が荷物を片付けて数分後、家のチャイムが鳴る。


 俺は先輩を家にあげ、話を始める。


「買い物終わりに家に来てもらって早々で申し訳ないんですけど、ルナに勉強を教えてもらいたくて…お願いしてもいいですか?」イチャイチャする前にやるべき事をやっておこうって算段だ。


「いいよ。お姉さんに任せない!」と先輩が久しぶりにお姉さん宣言をしてから俺は勉強を教えてもらう。


 そうして1時間ぐらいした後、俺のやるべき課題が終了した。

「教えてくださってありがとうございます!月のおかげで思ってたより早く終わったよ。」


それじゃ、先輩は待ちきれなさそうだからそろそろ始めるとしよう。


「…今日は特別ですからね。俺の膝枕、使ってもいいですよ。というか使ってください。頭撫でたいので。」俺がそう言うと先輩は「ではお言葉に甘えて遠慮なく…。」と言って俺の膝に頭を預けた。


ルナは毎日頑張ってて偉いね。忙しいのにいつも時間を作って俺に会いに来てくれてありがとう。疲れた時とか休みたい時に俺を頼ってくれいいんだよ。いつでも甘やかせてあげるからね。」そんなことを俺は先輩の頭を撫でながら囁き続ける。


 それを聴いている先輩の顔はすごく綻んでいた。その顔は俺の角度からは見えづらいかったので少し覗き込むようにして顔を見る。

ルナの顔すっごく幸せそうな顔してる。そんなに嬉しいんだ。」それから俺は追い打ちをかけるように先輩の耳元で囁きを続ける。


「可愛くて優しくて、いつも甘えてくれるルナが俺は一番好きだよ。いつも俺と一緒に居てくれてありがと。…ルナ大好き。」そんなあまい囁きに先輩は顔を赤らめ、以前と同じように顔を手で覆っていた。


 照れている可愛い先輩の頭を撫で続ける俺は、すごく幸せ者だな。と改めて実感するのであった。

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自分の欲望に忠実な可愛い先輩に振り回される後輩の話 秦 結希 @yuzukikokoro

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