第3話

「結構早めに着いちゃったな…。まだ時間はあるし可愛い可愛い冬雪の写真でも見ながら時間潰そうかな。」そんな独り言を呟く女性を俺は見つける。


俺は生粋のナンパ師、年齢はまぁ伏せておく。今までに成功したナンパは数知れず…。そんな歴戦の猛者である俺が一目惚れをし、いつものように声をかける。


「こんにちは、お姉さんすごく暇そうだね。30分もそこで立ちっぱなしで疲れてるんじゃない?お姉さん可愛いし、良かったら俺と一緒にお茶しない?」俺は定番のナンパの口説き文句を使う。


「へ?あ、ずっと見られてたんですね。恥ずかしい…。でも残念でした。私がここに来て待っている時間はあなたに話しかけられたタイミングでちょうど1時間ですよ。後、私には結婚まで考えてくれてる可愛い彼氏がいるんで。…そうだ。あなたさっき私の事可愛いって言いましたよね?実は今日の服選びすごく時間がかかってしまって…そう言ってもらえて少し自信がつきました。ん、そろそろ時間ですので失礼します。浮気するつもりは毛頭ないですが万一浮気を疑われてしまっては私の心が持ちませんので…。ナンパ成功するといいですね。」

お姉さんがずっと話している間、俺は一言も発することはなくただキョトンとして話を聞いていた。


ナンパが失敗して俺が呆然としていると、さっきのお姉さんの待ち人であろう人が歩いてきた。そしてその男がお姉さんに向かって言う。


「ごめん!遅くなっちゃったかも。もし待たせてたらすみません…。」コイツがこのお姉さんの彼氏か。彼女を待たせるだなんて最低な男だ。俺なら楽しみすぎて1時間前には――――――。なんてことを考えているとお姉さんが話し出す。


「大丈夫だよ。いつも通り冬雪は時間通りに来れて偉いね。それに私もそんなに待ってないし、さっき来たところだから気にしないで。それと、その…今日の私可愛い…かな?」

照れながら言うお姉さんはすごく可愛い。…そうじゃなくて、お姉さんさっきは「1時間前待ってる」って言ってなかったか?と思ったがそんな些細なことは目の前の尊いカップルを見てどうでも良くなるのだった。


あぁ、俺もナンパなんてしてないで真っ当に彼女を探そう。そう思う元ナンパ師なのであった。

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