第2話

 先輩に好きなだけ愛を伝えた俺は自分の体から先輩を引き剥がす。引き離された先輩は自分の顔を手で抑え、指に少し隙間を作りそこから俺の顔を見ている。


「ちょっ、ちょっと待ってね…嬉しくて口角上がっちゃって気持ち悪い顔になってると思うから見ないで欲しいな。」隠しきれていない耳や頬の端は真っ赤になっていて照れていることがよく分かる。


「月先輩が望むなら無理に見ようとしませんよ。落ち着くまで待ってますから。」

先輩が望んだこととはいえ流石にやりすぎたか…と少し反省しようとした時先輩が口を開く。


「そ、そうだ。お家デートはこの辺にして、次はどこかに遊びに行こうよ。冬雪はどうせ明日も暇でしょ?」あっ、これってお家デートだったのね。


 先輩の誘いは凄く嬉しい。が、俺がいつでも暇だと思われていることは少し心外だ。事実、休日はほとんど暇な日ばかりだから何も言い返せないわけだが…。でも、先輩が家に来ることでその暇が軽減されているのは言うまでもないだろう。


「いいですよ。どうせ俺は暇ですし月先輩と一緒にいられるなら俺はどこへだって行きますよ。それが地の果てだろうと、月であろうと。…なんて。」とありきたりな言葉を、でもしっかりと自分の意思で伝える。


その言葉を聞いた先輩が小さくため息を吐き話し始める。

「分かってたけど君はそういうのを平気で言うからこっちだけが恥ずかしくなってるみたいでなんか悔しいな。…でもそう言ってくれてすごく嬉しいよ。ありがと。」そう先輩から感謝と皮肉を告げられる。俺は事実と自分の気持ちを喋っているだけだから何も悪いことはしていない。普段振り回されてる仕返しとでも思ってくれれば…。


「それじゃ、明日楽しみにしてるね。明日が楽しみすぎて寝れませんでした、なんて言ってくるのはやめてよ?」先輩こそちゃんと寝てくださいよ。という返しは俺の中で留めておく。そうした方が良いと俺の勘が言っているからである。


「うん、俺も楽しみにしてますね。待ち時間、場所等はまた後でメールしてくれれば。」そうして俺は自分の家へと帰っていく先輩を見送る。


明日は本格的にデート、か。先輩の言う通り今日は寝れる気がしない…。そう思っていたがベッドに入ってしまえばすぐに俺は深い眠りについた。

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