第10話 廃鉱山レビオノス

 レビオノス鉱山がどこにあるのか。



 それはーーー。



 今、俺の目の前にある!!


「フクククククククククク……。ハハハハハハハハハハハハハハッ!!廃鉱山がなんだという!この俺が砂山に変わるまでしゃぶり尽くしてやるわっ!フッハッハッハッハッハッハッ!!」


 俺は誰も居ないレビオノス鉱山の関門こじ開け、地図に記された坑道のある山道目指して意気揚々と歩いていく。

 持ち物は、折り畳み式のピッケルとランプ、そして、掘り起こした鉱石を入れるための背負い袋。

 全て例の倉庫から拝借して来たものだ。工房と分けた所に置いてあったのを見るに、おそらくこれらはフレイヤの父ザッカスの物だろう。もちろん、借りる前に我が主人あるじフレイヤには承諾を取っている。

 フレイヤ曰くーーー。


「使ってないならいいんじゃない」


 だそうだ。

 5歳児の可愛さは全くないセリフに俺は逆に関心してしまった。


「そろそろ俺に関心がなくなってきたのかね」


 レビオノス鉱山に行きたい。

 と、怒られるのが嫌なので包み隠さずストレートに言うとあっさりオーケーをくれたくらいだ。


「まさか鉱山の場所まで教えてくれるとは思いもしなかったもんなあ〜」


 これはもう、あれだ。

 奴隷解放の日は近い。

 そうに違いない。


「最初はあれしろこうしろって、やたら命令してきたのに。今じゃ殆ど言ってこなくなったし、話も全然しないし」


 まぁ、初めからフレイヤとはあまり会話らしい会話をしたことがなかったからそこは別に関係ないか。

 しかしながら、最近のフレイヤ嬢は本当に怖いと言いますか。殺気立っていると言いますか。もう本当にオーラがやばい。


「働いてる俺を見る時なんて、どこぞの仇でも見つけたような目付きしてるもんな」


 かと言って、怒ってくるわけでもない。

 機嫌が悪ければすぐに怒鳴りつけて、手と足を出してくるというのに。


「我慢強くなったのか……、それともあれか、女の子の日か?5才で?ないないない」


 そうこうしているうちに目的の場所までやって来た。

 レビオノス鉱山の集会場跡地。


「ザッカスの話によれば……、お、これこれ!」


 タラララーン!

 俺は【レバーの柄】をゲットした!


「予備って言ってたから使ったらちゃんと戻さないとな」


 レビオノス鉱山の場所については最終的に全てフレイヤの口から聞いたが、俺はそれを聞く前から情報収集をしていた。

 ダイアスや村の鉱夫のおっさん達は俺に鉱石絡みのことは話してくれないので、フレイヤの両親のザッカスとカトリーヌからそれとなく聞き出していたのである。


「苦労した甲斐があった。このレバーの存在を知らなかったら、今頃坑道の入り口で立ち往生してただろうからな」


 カトリーヌから借りていた読み書き勉強用の資料を片手にザッカスから廃鉱山の管理体制について話題を持ちかけたのは、我ながら名案だった。ザッカスも、スザンナから口止めをくらっているはずなのに勉強の一環だからと言うとすらすら話してくれた。


 レビオノス鉱山は、標高約2800メートルでディアナス鉱山よりもやや低い。150年前に鉱脈が発見され採掘が始まったそうだ。ディアナス鉱山を掘り進める100年前まではレビオノス鉱山を使用していて、村の名前もレビオノス村だったらしい。

 元々痩せている鉱脈だったそうで、稼働していた50年の歴史の中で掘り進めた坑道は24道。鉱石がすぐに出なくなるので短い歴史の中でそれだけの数を掘ったらしい。もし100年以上使っていたらその二倍、三倍の数の坑道を掘っていたかも知れない。そんな事をザッカスは肩を竦めながら言っていた。

 プロが言うのだから、本当にレビオノス鉱山はカスカスなのだろう。


 そうして廃鉱山認定されたレビオノスは、開けた坑道の入り口一つ一つを頑丈な扉で蓋がされ、動物や野盗が侵入しないように固く閉じられているのだそうだ。

 それを開けるのに必要なのが、このレバーという事なのである!

 町役場の保管庫に一本。万が一のスペアがさっきの場所に一本。計二本だ。


「さあて、やって参りました。レビオノス鉱山第一番坑道。少しでいいからなにか出てくれよ!」


 俺は鉄で出来た扉の下に設置されたボックスに持って来たレバーを差し込んだ。柄の先が赤く光り、持ち手を変えて倒れている方向と反対に引こうとすると動かなかった。手を離すと赤い光も消えた。


「ほー?これって魔導機的なあれか?魔力を流し込んで的な」


 俺はレバーを両手で握り、魔力を流し込んでいった。

 すると、赤色がだんだんと緑色に変化していった。そこでようやく、俺はレバーを引いた。



 ーーーガゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!



 大きな音を立てて1番坑道の鉄の扉が開いていく。

 俺はレバーから手を離し、折り畳み式のピッケルを広げて肩に担ぎ、ランプを下げてその中に入っていった。


「何が出るかはお楽しみだけど、できればケミル先輩が出てくれたら良いなあ。そうだ、壁を叩いていけば見つけられないかな」


 ケミルニーダ・クォーツは球体の時は音を吸収する特性を持つ。どこに埋まってるか分からないため、コンコン、カンカン、壁を叩きながら俺は奥へと進んでいく。

 1番坑道は三つの分岐点があり、最初に二又、二つ目が三又、三つ目が二又となっている。

 メモした地図によると最初は右に行くと更に奥に行けるらしい。


「であれば、左を選ぶのが定石だな」


 行っていない道を全て潰してから先に進む。それが探索に於ける最大の極意である。突き当たりって大抵宝箱が置いてあるからね!

 俺はまず、一つ目の分岐点目掛けて意気揚々と進んでいった。左の壁面をピッケルでリズムよく叩く音が坑道に響いていく。

 そうして鉱石がないか隈なく見渡しながら、俺は初めての一人探索を楽しんでいくのだった。

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