きんにく★でーと

双瀬桔梗

きんにく★でーと

「ルーチェお姉さんは腹筋もかっこいいね~」

「あの、しえり……くすぐったいので、やめ……」

 寝室のベッドに、二人の女性が仲睦まじく横たわっている。正確には長身の異世界人ルーチェ・シュヴァンの上に、彼女の恋人であるしえりが乗っかっている状態だ。

 ワンピースタイプの、淡いピンクのパジャマを着たしえりは小柄で幼い顔立ちだが、大学二年生である。

 しえりはルーチェの白いパジャマの裾を捲り、彼女の腹筋に触れている。ルーチェはそれがくすぐったくて止めてほしいようだが、強くは拒否できない。ゆえに彼女は抵抗するのを諦め、腹筋に力を入れてしえりが満足するまで耐える方を選んだ。


 そういえば……今日はなぜか、腹筋尽くしの一日だった。


 しえりのふわふわした雰囲気から、色気はない空間でルーチェはふと、今日のを思い返す。

 午前中にしえりが好きな特撮ドラマ『筋肉部隊プロテインズ』の劇場版を観て感動し、その映画のコラボカフェで昼食をとる。その後は筋肉ヴィジュアル系ダンスボーカルユニット『SVALスヴァル』のライブに参戦し、夕方頃にはルーチェの日課の筋トレメニューを二人でこなした。それから、しえりの自宅でプロテインズのテレビ版を視聴しながら夕食をとり、二人でお風呂に入って今に至る。

 そんな一日だったからか、しえりはルーチェの腹筋を触ってみたいと言ってきた。彼女の申し出にルーチェは戸惑ったが、しえりに純真な瞳を向けられると、どんな頼みも断れないのだ。

 一通り思い返したところでルーチェは、しえりの手がピタリと止まっている事に気がつく。

「しえり……?」

 まさかと思い、小さな声で彼女の名を呼びながら顔を見ると、しえりはルーチェの上でスヤスヤと眠っていた。

「おやすみなさい、しえり」

 しえりの可愛らしい寝顔に癒されたルーチェは彼女の頭を優しく撫でると、傍らにある掛け布団をかけてから目を閉じた。

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きんにく★でーと 双瀬桔梗 @hutasekikyo_mozikaki

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