細マッチョの俺、筋肉好きの女子に見つかってしまう

さばりん

筋肉は凄い!

 初夏の香り漂う六月。

 ヒロトはYシャツを手で仰ぎながら、風を求めていた。

 まだ朝のHR前だというのに、気温は既に30度を超えている。

 果たして、地球温暖化はどれだけ加速してしまうのだろうか。

 8月頃には、平均気温が40度近くになっていて、外に出るのさえ困難になってしまうのではないかと心配になってきてしまう。


「一限って体育だよな」

「先着替えちゃおうぜ」


 クラスメイト達からそんな声が聞こえてくる。

 一限から体育とか、また汗を掻くのかと思うと億劫になってしまう。

 HR後だと時間が足りないので、ヒロトも他の男子生徒と同様着替えることにした。

 Yシャツを脱ぎ、汗で湿ってしまったインナーを脱ぎ捨てる。


「ふぅ……」


 窓から吹いてくる心地よい風に上半身が当てられ、すっきりとした開放感が訪れる。


「わぁ……すっごい」


 とそこで、隣の席に座っていた高橋さんが、ヒロトの身体を見て、恍惚な表情を浮かべている。

 ヒロトは高橋さんの視線に、動物的危機感を感じた。


「おはよう高橋さん……その、どうかした?」

「ジュル……へっ? いやっ、そのぉ……筋肉凄いなと思って……グヘヘッ」


 高橋さんは抑えきれないのか、口元からこぼれ出るよだれを手で擦る。

 これはいわゆる、腐女子という奴なのか……?

 あまり詳しくはないけど、男の人の裸に興味があると聞く。


「ねぇ……ちょっとだけでいいから、腹筋触らせてくれない?」

「えっ? まあ、いいけど……」


 ヒロトが了承すると、高橋さんは目をキラキラと輝かせる。


「それじゃあ……失礼します」


 深々と頭を下げてから、高橋さんはヒロトの綺麗に割れているシックスパックへ人差し指を伸ばした。

 そして……


 ツン


 と優しい力加減でヒロトの腹筋を突いてくる。


「きゃっはぁー/////////」


 刹那、高橋さんは奇声にも近い叫び声を上げた。

 高橋さんの大声に、クラスメイトの視線がこちらへ集まる。


「た、高橋さん……?」


 ハァ……ハァ……っと荒い息を吐きながら、高橋さんは口元を歪ませている。

 ヤバい、この人怖い。


「ねぇ……今度は胸の辺り触ってみてもいい?」

「丁重にお断りします」

「そんなぁぁー! いいじゃない! もう腹筋も乳繰り合う関係なんだから!」

「乳繰り合ってない! 変な拡大解釈は止めてください!」


 その後、高橋さんに何度も懇願される羽目になるのであった。 

 これからは、高橋さんのいない所で着替えようと、心に誓った。

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細マッチョの俺、筋肉好きの女子に見つかってしまう さばりん @c_sabarin

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