チーム脳筋、誕生?

天西 照実

斡旋事務員の憂鬱


 剣士、魔導士、僧侶、弓使い、銃使い……。

 様々なジョブをもち、パーティを組んだ冒険者たちが王城に集まっている。

 今日は国王陛下から冒険者たちへ、ねぎらいのお言葉をいただける日だ。

 陛下のお言葉にはレベルアップのための経験値というご褒美が含まれるため、誰もが積極的に参加する。


 ここは冒険の依頼が国中から集まる王都。

 始まりの城下街。

 俺は、冒険者たちに依頼を紹介する斡旋所事務員だ。

 謁見の間に集まる冒険者たちを、上階通路から見下ろしている。

 ちょっとした息抜きだ。

 隣では無表情な相棒が、珍しくにこやかだった。


「俺強ぇとか言ってる、脳筋を集めたパーティって便利そうじゃない?」

 と、相棒が言う。

「脳ミソまで筋肉って奴らだろ? 依頼を理解した上で、ルールを守って仕事するってのは難しいんじゃないか」

「だからさ。簡単に伝えればいい。魔獣の子どもたちじゃなくて、小型の魔獣の討伐って言ったって、余計なこと考えないでしょ」

 この雑踏を見下ろして、そんな事を考える腹黒さにも理由はある。

「オークのガキ共の討伐、気にしてたのか」

「……月給労働者を便利に使ってくれるもんだよ」


 冒険者が受けたがらない残りものの依頼は、俺たちが処理させられる。

 俺たちは事務員として働く、剣士と弓使いだ。


「あの種のオークは人間を区別なく仇討あだうちまとにする。奴らのねぐらと子育て巣穴が同時に見つかってれば、まとめて依頼できたのにな」

「人間に有害な魔獣だって、その子どもたちだけの討伐は誰だって良心が痛む」

「残りがちな依頼内容と、俺たちの出張業務を具体的な件数で報告してさ。依頼料上乗せの必要性を上司に訴えようぜ」

 俺が言うと、相棒は大きな目をパチパチさせた。

「君、頭いいね」

「事務員らしいだろ?」

「君も脳ミソ筋肉かと思ってた」

「俺は体だけだ」

「ふふっ。知ってる」


 相棒の機嫌が直ったところで。

 こんなに気の乗る書類作成は久々だ。

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