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「そ、それは。いつもはそーっと開けているし。今回は、びっくりしてつい。ごめんね。本当に、ごめん。でも、防御アイテムやシステムがあるから、あの程度平気でしょ?」


 ルーシーが両手をパンっと合わせて、ミーナに謝罪する。すると、その手のひらを合わせたことで風が巻き起こり、ミーナとスライムの髪を揺らした。


「ふふふ、そんなに謝らないで。ルーシーがどれほど私の事を大事に思ってくれているのかわかってるし、逆の立場なら、私だって力いっぱいドアを開けちゃうと思うわ。確かに、普段なら防御アイテムを作動させるし、飛来してくる物は落とすんだけどね。スライム君が、いきなりの事にびっくりして私を守るために体を覆ってくれていたの。その状態で、レーザー使ったりするとスライム君が傷つくから何も出来なくて。でも、スライム君が私を覆ってくれていたから、振動すらこれっぽっちも伝わらなかったの。おかげでかすり傷どころか、痛い場所なんてひとつないわ」

「ミーナ、私のせいなのに、なんて優しいの。それにしても、スライム君ってすごいのねぇ。普通はどんなに防御しても、私のフルパワーだと衝撃は残るし、ミーナも少しは痛いことだってあるのに」

「きゅーいっ」


 ふたりがスライムの事を褒めると、彼は誇らしげに胸を張った。ミーナが、スライムの頭をイイコイイコとなでると目を細めて、彼女に寄りかかる。


「ミーナ、今日はこの家で過ごせないでしょ? 今からうちにおいでよ。もちろん、スライム君も。そのほうが家族も喜ぶわ」

「いいの? 王宮の研究所にでも行こうと思っていたから助かるー。スライム君、ルーシーのおうちはね、ここよりもとっても大きいの。ルーシーのご両親もお兄さんも親切で優しいし。時々というより、しょっちゅうお泊りさせてもらっているから、私の研究道具も置かせてもらってるの。ルーシーの家でも、スライム君は快適に過ごせると思うわ。一緒に行こうか」

「きゅい」


 そうと決まればすぐに行こうと、ルーシーがベランダに立ち、ドラゴンに変化する。一瞬で変わった巨大で恐ろしい姿の彼女を見て、スライムがびっくりして怖がった。


「ぎゅー、ぎゅー。きゅいきゅいいい」

「スライム君、ルーシーはドラゴンだけど怖くないのよ。世界一強いのに優しいんだから」

「ぐるるぅ」

「きゅううう!」


 ルーシーが、怖がるスライムを慰めようと声をかけたが、それはどう聞いてもドラゴンの咆哮でしかない。結局、スライムは足を動かせないほどビビってしまい、スライムの姿に戻ったあと、ミーナが彼を抱えてルーシーの背に乗り込んだ。


 部屋のドアは壊れてしまっているため、建物の管理人にあとのことを任せて、ミーナとスライムを乗せたルーシーは、空高く舞い上がった。


 ルーシーの飛翔する速度は、音速を優に超える。その速さを、何の対策もなく彼女の背で過ごすことはかなわない。それどころか、飛び立とうとした瞬間、ミーナは吹き飛ばされてしまう。

 ミーナは、5年ほど前に自作したルーシーの首に取り付けられたカプセルの中に乗り込む。このカプセルは、ドラゴンの姿のルーシーの背に乗りたいと思い、世界一硬くて丈夫な鉱物で作ったものだ。さらに、ルーシーが魔法で守っているため安全安心設計。

 カプセルの中は、快適温度を保たれており、ほどよく体が沈むソファを設置している。そのソファに体を預けながら、スライムと一緒に空の旅を楽しんだのである。


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