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 スライムが、ミーナの服をどう着るのかわからなかったようだ。結局、目を背けながらミーナが着せてあげた。

 途中、スライムのスライムクンが見えたりしたらどうしようと、ドキドキしていたが、そういった物が中心になく単なるのっぺりした肌があるのみだった。


 ホッとしたような、少し残念なような気分になり、ハッと我に返って首をブンブン横に振る。すると、どこまでもピュアな瞳で「きゅ?」とミーナを見つめてくるものだから、何とも言えない感情が湧き出た。汚れた心を持つ自分は、そのまま浄化して消えたほうがいいのかもしれないと考えたほどである。


 ミーナの上下のトレーナーを着せると、スライムにはややきつそうだった。特にズボンに関しては、ふくらはぎが見えるくらいに丈が短い。後でスライムの服をネット注文するとして、3人は、取り合えずひっくりかえったソファとテーブルを設置して座った。


 幸いにも、無傷だったキッチンからお茶とクッキーを用意して一息つく。周囲は瓦礫の山のままだが。


「きゅっきゅー、きゅっ、きゅいー」

「クッキー美味しい? なんでも食べるって本当なのね。これはね、クッキーっていうのよ、クッキー」

「きゅっきー」

「そう上手ね。クッキーよ、もう一度言ってみて?」

「きゅ、きゅ、……きゅっきー!」

「ふふふ、私たちの言っている事を理解できるのがありがたいわね。スライム君の言葉も少しだけどわかるし。言葉をちょっとずつ覚えて行こうねー。そうだ、自動翻訳アイテムも作ってあげる。前に、亀の子供の気持ちがわかるアイテムを作った事があってね。亀の子供は声がないけどちゃんと作れたわ。だから、意志を伝える音が出せるスライム用はもう少し簡単に作れると思うの。そうすれば、スライム君の話したい事が私たちに伝わるわ」

「きゅい」


 ルーシーは、ミーナと同年代の少年の姿をしたスライムとのほのぼのした会話を、にこにこと見つめていた。ミーナの翻訳アイテムが出来れば、もっと意思疎通が可能になり、彼との仲も深まるだろう。


「でもなんで、スライム君はミーナの体に纏わりついていたの? 私、てっきり捕食されているのかと……。それに、この部屋。普段から、ミーナの汚部屋っぷりは知っているけどさ、どう見ても襲撃されたみたいじゃない」

「汚部屋って失礼しちゃうわ。必要最低限の生活スペースくらいはあるってば。あと、この有様にしたのはルーシーなんだけど」

「え? 私は入ってきただけよ。少し力を入れたからドアの長番がねじ曲がったっぽいけど。そ、それは魔法の建具屋さんのビーバー獣人にお願いするから許して」

「それは、早く修理してもらえると助かる。ドアが壊れた今のままだと、ここには住めないし。部屋の中は、ドアが勢いよく開いてジェット気流みたいな空気の流れが出来た衝撃で、こうなっちゃったのよ」


 ミーナが、ルーシーが来るまでの間の、自分が片付けていない事による汚部屋や、スライムが壊してぐちゃぐちゃにした事を伏せてそう言うと、ルーシーは申し訳なさそうにぐっと唇を噛み俯いた。




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