KAC20235 河上君は、それなりに筋肉質みたいだ

日々菜 夕

河上君は、それなりに筋肉質みたいだ


 今度、観に行く映画をどんなのにしようか?


 その打ち合わせのために河上君には、お店に来てもらっている。


 そんなの電話で済ませたら?


 そう言われればもっともなんだけど……


 やっぱり直接会って決める方がデートっぽくていいじゃない!


 そんな下心満載私に対し。


 河上君は、猫のみゃーこと遊びながら私と一緒にパソコンの画面を見ている。


 私としては、なるべく河上君の好みに合わせた内容にしようと思っていたのだけれど……


 趣味が筋トレと聞いて……は?


 って、なっちゃった。


 なんでも、将来的にお店を継ぐ予定であり。


 そのためには、体力を付けておかないといけないらしく。


 まるで体育会系みたいな日々を送っているのだそうだ。


 調理師免許を取るために専門学校へ通っているかたわらそんなことをしているとは思わなかった。


 日々みゃーこをもふりながら自堕落に過ごす私とは対極に位置する存在みたいで。


 今日の河上君は、どこにでもいそうな普通の青年から、ちょっと大人びた感じの人に見えてきた。


 このシャッター街で唯一といってもいいくらい頑張っている定食屋さんの跡取りだけのことはある。


 人気メニューは特盛のカツ丼で遠方からわざわざ食べにくる人までいるくらいだ。


 やはりSNSの力は大きいと感じる一例だろう。


 で、肝心の映画のチョイスなのだが……


 思った以上に難航してしまっていた。


「ボクとしては、音無おとなしさんが観たい映画でいいと思うんだけど……」


 なんて言われてしまったからである。


 自分から誘っておいてノープランなのかよ!


 と、ツッコミたくもあるが。


 ぐっとこらえる私、エライ。


 よくぞ耐えた。


 かと言って、私好みな恋愛映画をチョイスするのもためらってしまう。


 なんでも、はじめてのデートで恋愛映画を選ぶのはあまりよくないとされているからだ。


 まぁ、人それぞれだし。


 上手くいった例もあるから悪くはないと思うんだけど……


「河上君は、恋愛ものとアクションもので言ったらどっちが好み?」

「ん~。アクションものだと思うけど。音無さんは恋愛もの好きだって言ってたよね?」



 どうやら流れ的に恋愛もの一択な気がしてきた。


 そんな時である。


 クマのぬいぐるみを咥えたみゃーこがものすごい勢いでこちらに向かってくるのが見えた。


 いつになく興奮しているのか、そのままの勢いでジャンプ!


 河上君の頭を押す形となり!?


 元々近かった私達の距離が急接近!


 特に河上君は、私の方に身体を傾ける感じでパソコンの画面を見てたから――


 思わず、身体の一部が触れてしまった。


 私、初めてだったのに!


 もう、大パニックである。


 河上君も、真っ赤な顔して固まっちゃってるし!


「みゃぁ~ぉ~」


 なぜかみゃーこは、この上ないどや顔だし。


 どうしてくれるのよ!


 めちゃくちゃ気まずくなっちゃったじゃない!



 おしまい 

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KAC20235 河上君は、それなりに筋肉質みたいだ 日々菜 夕 @nekoya2021

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