大会に参加するかいなか~ドラゴンを連れた鍵師と史上最弱なパーティーの仲間たちKAC版~

野林緑里

第1話

「なんだ? 人が集まっているぞ」


 久しぶりにギルドへ訪れたキイたちは掲示板に人だかりができていることに気づいた。


 普段掲示板に人が群れることはない。


 なぜなら、掲示板にあるのは冒険依頼情報というよりもただのタウン情報的なものが貼り出されているためだ。冒険依頼情報ならば受付で対応になっており、冒険者のレベルにあわせて情報を提供することになっている。


 だから冒険者たちの興味を引くようなものがあるはずのない掲示板に集まることはとても珍しいことであった。


「ボク見てくるよ」


 そういって、ドラゴンのリデルがキイの肩から離れると上の方から掲示板をみた。


「どれどれ、ふむふむ、そういうことか」


 彼らが注目しているらしい掲示板を読むとキイたちのほうへと戻る。


「なにが書いてあったんだ?」


 キイが尋ねる。


「なんかね。大会があるらしいんだ。その募集」


「大会?」


 キイたちはお互いを見合わせる。


「どういう大会だ?」


「うーん。人が多過ぎてよくわからなかったよ」


「そっか」



「受け付けに来てみようよ」


 アイシアの提案により受付の方へと向かうことにした。


 受付のほうは相変わらず混んでいる。


「今日も並ばないといけないのか」


「いつものことじゃないの」


 キイのうんざりしたようなぼやきにアイシアはあきれたようにため息を漏らす。


 どれくらいか並んでいるうちに順番がまわってきたので、さっそく尋ねることにした。


「あれですか? 筋肉自慢大会です」


「筋肉自慢大会?」


「はい。各冒険者パーティーの代表が筋肉自慢で競うんです」


「筋肉自慢……」


 キイはパーティーの仲間たちを一人一人みる。


「俺たちには関係なさそうだな」


 キイを含めてパーティーの仲間に筋肉自慢などいないのだから、参加する資格もないだろう。


「そうでもないですよ」


 そんなことを考えていると受付嬢が口を開いた。


「筋肉自慢といっても、マッチョである必要はありません。過去にはか弱い女性が挑戦して良い成績もとってます。ようするに本人のやる気次第なんです。どうですか? 参加しませんか?」


「うーん。でもなあ」


「ちなみに優勝すれば賞金が金貨五百です」


「やります!」


 悩んでいたキイたちは受付嬢の最後の一言で即決してしまった。



 はたして、か弱い女性も参加できる「筋肉自慢大会」とはいかなるものか。





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