第11話 返事

【翔吾 視点】




「翔吾くんのことが好きです……」


 告白された。

 誰に? 

 ナナミに……。


 なんだこれ。

 本当に現実か、と思ってしまう。

 実は夢だったりして……。


 いや、待て。

 ナナミは本当に俺のことが好きなのか?

 もしかしたら罰ゲームかもしれない。

 

 そもそも、今のナナミは中村と付き合っているじゃないか。

 なのに、なんで俺に告白してきたんだよ。

 コイツは何を考えているんだ?


 ダメだ、分からない。

 ナナミの考えていることが全く分からないよ。

 

 混乱している俺を無視して、ナナミは続きの言葉を紡ぐ。


「アタシ、本当に翔吾くんのことが好きなのっ。最近それに気づいたんだっ。だからっ……アタシと付き合ってください、お願いしますっ」


 ナナミの声は震えていた。

 緊張しているんだろう。

 とても嘘や冗談を言っているようには見えない。


 たぶん、ナナミは本当に俺のことが好きなんだろう。


 そっか、ナナミは本当に俺のこと好きなのか。

 嬉しい、凄く嬉しい。


 いや、ちょっと待て……。

 さっきも言ったけど、ナナミには彼氏がいる。

 なのに、なんで俺に告白してきたんだ? 


 気になった俺はナナミに疑問を投げた。


「お前と中村は今も付き合ってるんだろ? なのに、どうして俺に告白してきたんだよっ?」

「……ううん、もうアタシと亮太くんは恋人じゃないよっ」


 ナナミの返事に思わず「は……?」と間抜けな声を漏らす。

 え? どういうこと?  

 もうナナミと中村は恋人じゃないのか? 


 いつ別れたんだ? 

 つか、なんで中村と別れたんだよ?

 喧嘩でもしたのかな?


「中村と別れたのか……?」

「うん、亮太くんとは昨日別れたよっ……」

「いやいや、意味分かんねぇよっ。お前らラブラブだったじゃんっ。なのに、なんで別れたんだよっ。喧嘩でもしたのか?」

「ううん、喧嘩はしてないよ……」

「じゃあなんで別れたんだよっ!」

「それはその……翔吾くんには教えたくないっ」

「……」


 謎だ。

 なんでナナミと中村は別れたんだろう?


 知りたいけど、本人が別れた理由を教えてくれないんだよな。


 ちっ、なんで中村と別れた理由を教えてくれないんだよ。

 めっちゃ気になるじゃん……。


 まぁいいか。

 それより、早く告白の返事をしないとダメだな。


「えーっと、ナナミは本当に俺のことが好きなのか?」

「うんっ、世界で一番好きだよっ」

「世界で一番……? 中村より俺のことが好きなのか?」

「うん、亮太くんより翔吾くんの方が好きだよ。だからアタシの恋人になって、お願いっ……」

「……」


 今のナナミは中村より俺の方が好きなのか。

 ナナミの一番は俺のなのか。

 嬉しいっ、凄く嬉しい。


 けどなんで今なんだよっ。

 遅いよっ、遅すぎるよ、ナナミっ……。


 もっと早く告白してくれよ。

 そしたら、お前と恋人になれたのに……。


「すまんっ、ナナミ」

「……え? なんで急に謝るの? 意味わかんないんだけど」


 俺の謝罪に困惑するナナミ。

 そんな彼女に俺は告白の返事をした。


「俺もナナミのことが好きだ。けどお前とは付き合えないっ……」

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