第12話 フラれる

【ナナミ 視点】



「俺もナナミのことが好きだ。けどお前とは付き合えないっ……」

「……」


 フラれた。

 誰に? 

 翔吾くんに……。


 大好きな人にフラれて、自分の人格まで否定されたような気分になってしまう。


 翔吾くんにフラれた。

 辛いっ、辛すぎるよっ。


 というか、意味わかんないんだけど……。


 翔吾くんはアタシのこと好きなんだよね?

 なのに、どうしてアタシの告白を断ったの? 

 本当に意味わかんないんだけど……。

 

「えーっと、翔吾くんはアタシのこと好きなんだよね?」

「ああ、大好きだよっ、ナナミ……」

「いやいや、意味わかんないよっ。翔吾くんはアタシのことが好きなんでしょ? ならアタシと付き合ってよっ」

「すまん、それはできないっ……」

「どうしてっ! どうして恋人になってくれないの!!」


 アタシは翔吾くんのことが大好きだ。

 翔吾くんもアタシのことが大好きらしい。


 アタシたちは両想いなんだ。

 なのに、どうしてアタシと付き合ってくれないの……?


 分からないっ、翔吾くんの考えてること本当に分かんないよっ。


「……俺さ、もう彼女いるんだ」

「え……?」


 翔吾くんの言葉に思わず目を丸くする。

 翔吾くんに彼女?


 え? どういうこと? そんなの聞いてないんだけど……。

 もしかして嘘ついてるのかな?

 

「本当に彼女いるの……? 嘘ついてない?」

「違う、違うっ。嘘じゃないよ。彼女がいるのはマジだって」

「誰?」

「え?」

「誰と付き合ってるの?」

谷本たにもとだよ」

谷本たにもと……?」

「ああ。最近、谷本たにもと穂香ほのかと付き合い始めたんだ」

「……」


 え? ちょっと待て……。

 翔吾くん、穂香ほのかちゃんと付き合ってるの?

 あはは、流石にそれは嘘でしょ……? 

 ねぇ嘘だよね……?


 谷本たにもと穂香ほのかちゃんは可愛くて、スタイル良くて、明るくて、面白くて。

 男性の理想を具現化したような女の子だ。


 谷本たにもと穂香ほのかちゃんは学校中の男子生徒にモテモテで、今月も6人の男の子に告白されたらしい。

 そんな凄い子と翔吾くんが付き合い始めた? 

 

 いやいや、それは絶対嘘でしょ。

 はぁ……どうして翔吾くんはそんな嘘つくのかな。

 意味わかんないよっ……。


 ふと翔吾くんと穂香ちゃんの会話が脳裏に浮かぶ。


『翔吾くん、昨日ワタシがお勧めしたアニメ観てくれた?』

『え? あぁ……ちゃんと観たぞ。全く面白くなかったけどな』

『え? それマジで言ってる? ワタシはあの作品めっちゃ好きだけどな~』

『俺、ああいうラブコメアニメ嫌いなんだよ。特に昨日観たアニメは主人公が鈍感すぎてイライラしたわ』

『あはは……それは仕方ないよ。主人公が鈍感じゃないとラブコメは一瞬で完結しちゃうからね』

『まぁ確かにそうだな』


 そういえば、翔吾くんと穂香ちゃんは仲良しだったよね……。

 いつも教室の中でアニメの話してるし。


 翔吾くんとアニメの話をしている時の穂香ちゃんは凄く幸せそうだった。

 

 もしかして、二人は本当に付き合ってるの……?


「本当に穂香ちゃんと付き合ってるの……?」

「ああ、本当だ。だからお前とは付き合えないっ。ごめんな、ナナミ……」

「……」





 ◇◇◇






 大好きな翔吾くんにフラれてしまった。

 辛いっ、辛すぎるよっ。

 翔吾くんにフラれたことがショックすぎて、昨日はずっと泣いていた。

 

 もし翔吾くんにフラれたらもっと積極的にアプローチをして、再び告白する予定だった。

 諦めずに何回も告白すれば翔吾くんと恋人になれると思っていた。


 けど今の翔吾くんには彼女がいる。

 しかも、翔吾くんの彼女はあの谷本たにもと穂香ほのかちゃんだ。


 最近、男子の間で行われた『可愛い女の子ランキング』で穂香ちゃんは二位に圧倒的な差をつけて一位だったらしい。

 そんな凄い子と戦っても絶対に勝てない。

 勝てる自信がないよっ……。


 ダメだっ、たくさんアプローチしても谷本たにもと穂香ほのかちゃんから翔吾くんを奪える気がしない。


 他の女の子なら翔吾くんを奪えたかもしれないけど、谷本穂香ちゃんは絶対に無理だ。


 勝てる気がしない。

 だって穂香ちゃんはアタシよりも可愛いし、スタイルも抜群だし、性格もめっちゃ良いし。


 やっぱり谷本穂香ちゃんに勝てる気がしないよ……。


 まさか、翔吾くんが穂香ちゃんと付き合っていたなんて。

 はぁ……そんなの聞いてないよっ。

 それを知ってたら告白なんかしなかったのにっ。

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