第4話 姉
ナナミにドタキャンされたあと、俺は自宅に戻ってきた。
俺はベッドに寝転んで目を閉じる。
今頃、ナナミは中村とデートしてるのかな?
イチャイチャしているナナミと中村を妄想した瞬間、ギュッと胸が締め付けられる。
なんでだよっ、なんで中村とデートしてるんだよっ。
先に約束したの俺じゃん。
なのにどうして彼氏を優先するんだよ。
そんなに彼氏のことが大事なのか?
もう俺のことはどうでもいいのか……?
ずっとナナミのことを考えていると、急に隣の部屋から『あっあっあっ……』と女性の甘い声が聞こえてきた。
ギシギシとベッドの軋む音も聞こえてくる。
はぁ……今日も姉ちゃんは彼氏とエッチしてるのか。
「んっんっんっ……」
再び隣の部屋から「んっんっ」と切ない声が聞こえてきた。
その甘い声が聞こえないように俺はイヤホンを装着して、音楽を聴き始める。
さっきのは姉ちゃんの声だ。
たぶん、今日も隣の部屋で彼氏とエッチしてるんだろうな……。
はぁ……なんで俺が家にいるのに彼氏とエッチしてるんだよ。
そういうのはラブホでしてくれ。
高校一年生の俺には刺激が強すぎる……。
前に『この家で彼氏とエッチするのやめてくれないか?』と頼んだことあるけど、姉ちゃんに『絶対無理っ、ラブホ行くお金ないもん』と断られた。
イヤホンを装着しているのに、再び隣の部屋から「んっんっ……」と姉ちゃんの甘い声が聞こえてきた。
チュッチュッとリップ音も聞こえてくる。
隣の部屋で彼氏と熱くて濃厚なキスをしているんだろう。
ちっ、そういうのは外でやってくれっ。
マジで迷惑だ。
昔の姉ちゃんは本当に優しかった。
いつも俺やナナミの相手をしてくれたんだ。
「姉ちゃん! 一緒に対戦ゲームしようぜ!」
「ふふっ、いいよ。アタシの部屋でしよっか」
「うん!」
姉ちゃんと一緒に遊ぶのは本当に楽しかった。
ずっとこんな時間が続くんだろうな、と思っていた。
けど違った。
俺が中学二年生の頃、この幸せな時間は壊れてしまった。
「姉ちゃんっ! 今日も一緒にゲームしようぜ!」
「ごめんっ、今日は無理っ」
「え? なんで無理なの……?」
「今日は1時から彼氏と遊ぶ約束してるの。だからアンタと遊ぶのは無理」
「そんな……」
俺が中学二年生の頃、姉ちゃんに彼氏ができた。
姉ちゃんの彼氏はイケメンで、優しくて、喋りやすくて。
完璧な男だった。
俺も姉ちゃんの彼氏は好きだ。
めっちゃイイ人だし。
けど正直、姉ちゃんに彼氏ができるのは嫌だった……。
だって、彼氏ができてから俺と遊んでくれなくなったし。
そう、姉ちゃんは彼氏ができてから全然俺の相手をしてくれなくなったんだ。
俺が『一緒に遊ぼう』と誘っても姉ちゃんは『彼氏と遊ぶから無理』と断ってくる。
夜に『一緒にゲームしようぜ!』と誘ってみると、『今彼氏とビデオ通話してるの! 邪魔しないでっ!』と本気で怒られた。
いつも俺じゃなくて彼氏を優先するんだ。
当時の俺はそれが辛くて仕方なかった。
中学二年生まで俺と姉ちゃんは凄く仲が良かったのに、今は会話もしない。
ナナミも彼氏ができてから付き合いが悪くなった。
全然俺の相手をしてくれないっ。
今日はドタキャンまでされた。
ナナミは彼氏のことが好きすぎて、もう俺のことなんかどうでもいいんだろうな……。
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