第5話 嫉妬
学校中にチャイム音が鳴り響く。
午前の授業が終わり、やっとお昼休みだ。
さてと、一人でお弁当食べるか。
昔はナナミと一緒にお昼ご飯を食べていた。
けど最近は一人でお昼ご飯を食べることが多い。
俺が『ナナミ! 一緒にお昼ご飯食べようぜ!』と誘っても『ごめん、今日も彼氏と一緒に食べるから無理』と冷たく断ってくるんだ。
ナナミのヤツ、彼氏ができてから俺に冷たくなったよな……。
もうちょっとだけ俺のことも大切にしてくれよ。
俺たち、幼馴染じゃん。
そうだよっ、俺たちは幼馴染だ。
幼稚園の頃から仲良しなんだ。
なのに、どうして彼氏ができてから俺に冷たくするんだよ。
昨日だって俺と一緒に遊ぶ約束してたのに、なんでドタキャンしたんだよっ。
ちっ、本当にムカつくなっ……。
あっ、ヤバい……早くお弁当食べないとお昼休みが終わってしまう。
教室でお弁当を食べるのは嫌だったので、俺は屋上に移動する。
屋上のベンチを見て、俺は目を見開く。
え? ナナミと中村……?
アイツら、なんでこんなところにいるんだ?
屋上にはナナミと中村がいた。
二人は屋上のベンチに座って、仲良くお弁当を食べている。
ナナミも中村も俺の存在には気づいていない。
「どう、アタシのお弁当美味しい?」
ナナミがそう言うと、中村は答えた。
「ああ、マジで美味しいよ、ナナミ。いつもありがとうな」
「えへへ、どういたしまして」
どうやら、ナナミは中村のためにお弁当を作ってあげたらしい。
ふーん、ナナミのヤツ、中村のお弁当まで作ってあげてるんだ。
本当に中村のことが好きなんだろうな……。
ん? そういえば中村のヤツ、ナナミのこと名前で呼んでたな。
前まで中村はナナミのことを『星宮』と苗字で呼んでいた。
けど今は『ナナミ』と名前で呼んでいる。
アイツら、どんどん仲良くなってるな。
「亮太くんっ」
「ん? どうした? ナナミ?」
「……アタシ、亮太くんのために頑張ってお弁当作ってきたんだよ?」
「え? あっ、うん……それがどうしたんだよ?」
「だからその……ご褒美が欲しいな」
「ご褒美?」
「うん……ご褒美のチューをしてほしいの」
「あははっ、ナナミは本当に俺とキスするの好きだよな」
「うんっ、亮太くんとキスするの大好きっ。亮太くんはどうなの? アタシとキスするの好き?」
「おう、俺もナナミとキスするの大好きだよ」
「亮太くんっ……」
「ナナミ……」
ナナミと中村は瞼を閉じてそっと顔を近づける。
気づいたらナナミの唇と中村の唇は重なっていた。
キスしている二人を見て、俺は混乱してしまう。
え? 何してんだ? アイツら……。
「ちゅっ、ちゅっ……亮太くんっ」
「ナナミっ……」
「亮太くんっ……ちゅっ、ちゅっ、んっんっ……」
おいおい、マジかよっ……。
アイツら、学校の屋上で急にキスし始めたぞっ。
大胆すぎるだろ。
アイツら、いつもこんなことしてるのか?
「ちゅっ、ちゅっ……んっんっ、亮太くん、好き、大好きっ」
「俺も大好きだよ、ナナミ」
「嬉しいっ……んちゅっ、ちゅっ、ちゅっ……んっんっ」
再び二人は顔を近づけてキスする。
ただのキスじゃない。
舌を絡め合うドロドロのキスだ。
あのナナミが中村とキスしてる……。
なんだこれ……。
これは本当に現実なのか?
そう思ってしまうほど、ナナミと中村のキスは非現実的だった。
「んっんっ……ちゅっ、ちゅっ」
「ナナミっ」
「亮太くんっ……ちゅっ、ちゅっ、んっんっ」
チュッチュッとリップ音が俺の耳に伝わってくる。
そのリップ音が聞こえてくる度に、胸の奥がチクチクと痛む。
「……」
ナナミと中村のキスを見ていると、頭の中が真っ白になる。
嫉妬で狂いそうになる。
なんでだよっ、なんで俺は嫉妬してるんだ……?
まさか、俺はナナミのことが好きなのか?
だから中村に対して嫉妬しているのか?
「……」
俺とナナミは幼稚園の頃から仲良しだ。
小さい頃は一緒にお風呂入ったことあるし、一緒に寝たこともある。
それぐらい俺たちは仲良しなんだ。
たぶん、俺はナナミのことが好きだ。
昔からナナミのことが女の子として大好きだったんだ。
けど今まで俺は自分の気持ちに気づいていなかった。
ナナミに彼氏ができてからやっと自分の気持ちに気づいてしまった。
そっか、俺はナナミのことが好きなのか。
だからナナミと中村の熱いキスシーンを見て、嫉妬しているのか。
あぁぁ……なんでだよっ。
なんで今更自分の気持ちに気づくんだよっ。
遅すぎるだろっ。
もうナナミには彼氏がいるのに……。
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