第6話 拒絶
今日、俺はナナミのことが好きになってしまった。
いや、ちょっと違うな。
俺は昔からナナミのことが好きだった。
それに今日気が付いたんだ。
はぁ……なんで今更自分の気持ちに気づくんだよっ。
遅すぎるだろ。
今のナナミは中村亮太と付き合っている。
そうだよっ、今のアイツには彼氏がいるんだ。
今更、告白してもナナミと中村に迷惑をかけるだけだ。
俺が本気を出したら中村からナナミを奪えるかもしれない。
ナナミと付き合えるかもしれない。
けど、それはできない。
ナナミと中村はお似合いだ。
やっぱり、あのラブラブな二人を邪魔することはできない。
仕方ないっ、
ナナミのことは諦めよう……。
「俺、失恋したのか……」
そう思った途端、目頭が熱くなる。
気づいたらボロボロと涙を流していた。
「うぅぅ……あぁっ、あぁっ……」
嫌だっ、誰にもナナミを渡したくない。
アイツと恋人になりたいよっ。
けど、中村からナナミを奪うことはできない。
やっぱり二人の邪魔はしたくないんだ……。
もうナナミのこと関わるのはやめよう。
これ以上、ナナミと関わっても辛くなるだけだからな……。
ナナミのことを忘れるために、俺は彼女の連絡先をブロックした。
ナナミのSNSアカウントもブロックした。
スマホの中に保存されているナナミとのツーショット写真も削除した。
◇◇◇
――次の日――
現在、俺は学校に向かって歩いていた。
ボーっと通学路を歩ているうちに、やっと学校に到着した。
教室にやってきた俺は自分の席に座ってスマホをイジリ始める。
ずっとスマホをイジッていると、横から「翔吾くんっ!」と女性の声が聞こえてきた。
聞き覚えのある声だった。
反射的に横を振り向くと、制服姿のナナミがいた。
ナナミは鋭い目で俺を睨んでいる。
怒っているように見えた。
ん? なんで怒ってるんだろう?
「なんでっ……なんでアタシの連絡先ブロックしたの?」
「……」
「なんでアタシのSNSアカウントもブロックしたの!? 早く答えて!!」
どうやら、ナナミは俺に連絡先とSNSのアカウントをブロックされて怒っているようだ。
黙り込んでいる俺を見て、再びナナミは口を開いた。
「ねぇどうしてアタシの連絡先ブロックしたの? どうしてSNSのアカウントまでブロックしたの? 意味わかんないよっ……どうしてそんな酷いことするのっ」
「……」
「翔吾くんはアタシのこと嫌いなの? アタシのことが嫌いだからこんな酷いことしたの? ねぇなんでさっきから黙ってるの……早く返事してよっ」
「……」
俺はナナミの言葉を無視してソシャゲを始める。
うん、やっぱりソシャゲは楽しいなぁ~。
ソシャゲを楽しんでいる俺を見て、ナナミは憎悪に満ちた表情を浮かべる。
あっ、ヤバい。
これはガチで怒ってるなぁ。
「ゲームしてないで早く答えてよっ!! どうしてアタシの連絡先ブロックしたの!? どうしてそんな酷いことしたの!?」
「ちっ、黙れ。もう俺に話しかけるな」
「っ……」
俺の冷たい言葉にナナミは声にもならない声を上げる。
よく観察すると、彼女の目には熱い涙が溜まっていた。
今にも泣きそうだった。
「なんでそんな酷いこと言うの……? アタシ、翔吾くんに何かした……?」
「……」
「あっ、もしかして先週の土曜日アタシがドタキャンしたから怒ってるの?」
先週の土曜日、俺はナナミと遊ぶ約束をしていた。
まぁ結局ナナミにドタキャンされて、遊べなくなったけどな……。
あれはマジで辛かったな……。
「あの時は本当にごめんっ。けど、どうしても亮太くんとデートしたかったの……。だから許して」
「ちっ、何回言えば分かるんだよっ。もう俺に話しかけるなって言っただろ!」
俺がそう言うと、ナナミはバカみたいに泣き始める。
泣いているナナミを見ていると、チクチクと胸が痛む。
女の子を泣かせてしまった。
最低だ、俺は本当に最低だ。
けど仕方ないじゃん。
これ以上ナナミと関わっても辛いだけなんだよっ……。
だからこれでいいんだっ。
これが正しいんだ。
はぁ……。
早くナナミのこと忘れて、新しい恋をしたいよ。
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