第16話 泊めてよ
食べ放題の焼肉屋にやってきた。
懐かしい。
ナナミと仲良かった頃はよくこの店に来たよな。
俺は店員に指示された席に腰を下ろす。
ナナミは対面の席に座った。
「ここ懐かしいなぁ~。久しぶりに来たけど、何も変わってないね」
「ははっ、本当だな」
ナナミと会話しながらお肉を焼いて、パクッと食べる。
うん、やっぱり美味しいなぁ。
ナナミも美味しそうにお肉を食べていた。
「あっ、そういえば翔吾くん今は一人暮らしなんだよね?」
「おう、そうだぞ」
大学に進学すると同時に、俺は一人暮らしを始めた。
一人暮らしを始めた理由は姉ちゃんと距離を置きたかったから。
俺、姉ちゃんと仲悪いんだよ。
もう二度とあのクソビッチの顔は見たくない……。
「ナナミは今も実家暮らしだよな?」
「うん、そうだよ。まぁ今は家出してるけどね」
「え……?」
ナナミの言葉に驚いてしまう。
え? ちょっと待て。コイツ、家出してるの?
なんで家出なんかしてるんだ?
マジで意味分からないんだけど。
気づいたらナナミに疑問を投げていた。
「なんで家出してるんだよ?」
「最近パパと大喧嘩してさ……イライラしすぎて家出しちゃったの」
「そ、そうなんだ……」
家出の原因はおじさんか。
そういえば、ナナミとおじさんは仲悪かったなぁ。
「お前、これからどうするつもりなんだよ? まだ家に帰らないのか?」
「分からない……まぁしばらくはネカフェで生活するつもりだけど」
「ネカフェ……? お前、あんなところに泊まってるのか?」
「うん、そうだよ」
「……」
ネカフェか……。
ああいうところって安全なのかな?
一度も利用したことないからよく分からない。
「けど、これ以上ネカフェで生活してたらお小遣いが全部なくなっちゃうんだよね。はぁ……どうしようかな」
「……」
「あっ、そうだ。今日から翔吾くんの家に泊まっていい?」
「え? 俺の家?」
「うん、ヤらせてあげるからしばらくアタシのこと泊めてよ……」
「……」
ナナミの提案に頭の中が真っ白になる。
コイツ、今なんて言った?
俺の聞き間違いか……?
「すまん、よく聞こえなかった。もう一回言ってくれないか?」
「ヤらせてあげるからしばらくアタシのこと泊めてくれない?」
「……」
どうやら、俺の聞き間違いではないようだ。
コイツ、何考えてるんだ?
意味わかんねぇ……。
「それ本気で言ってるのか……? 冗談だろ……?」
「ん? 冗談じゃないよ。しばらくアタシのこと泊めてくれるんだったらたくさんヤらせてあげる」
「……」
「あっ、けど流石に生はダメだよ……? アタシまだ学生だし」
コイツ、さっきから何言ってんだ?
俺のことからかってるのかな?
いや、けど嘘や冗談を言っているようには見えないんだよな……。
どうしよう、なんて返事すればいいのかな……。
「本当にヤらせてくれるのか?」
「うん、本当だよ。その代わり、しばらくアタシのこと泊めてね?」
「……」
たぶん、ナナミは嘘をついていない。
コイツは本気だ。
だから混乱してしまう。
どうすればいいんだろう?
やっぱり断った方がいいのかな?
いや、けどな……。
しばらくして俺は返事した。
「はぁ……分かったよ。しばらく泊めればいいんだな?」
「うんっ、ありがとう、翔吾くんっ」
「……」
しばらくナナミを家に泊めることになった。
本当にこれで良かったのかな……?
というか、本当にヤらせてくれるのかな?
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