第15話 再会

 最近、近所のスーパーでアルバイトを始めた。


 仕事の内容は主にレジ打ちをしたり、棚に商品を補充したり、お客さんに商品の場所を訊かれたら教えてあげたり。


 楽そうだなと思ってスーパーのアルバイトを選んだけど、意外と忙しいんだよな……。

 平日はまだマシだけど、休日は本当に忙しい。


 なんてこと思っているうちに、やっとバイトが終わった。

 あぁぁ……やっと終わった。

 今日もマジで疲れたよ。

 

 さてと、家に帰るか。


 更衣室でバイトの制服から私服に着替えたあと、俺は帰り道を歩き始める。

 

 ボーっと帰り道を歩いていると、後ろから「翔吾くんだよね?」と女性の透き通った声が聞こえてきた。

 聞き覚えのある声だった。


 気になった俺は後ろを振り向くと、幼馴染のナナミがいた。


 ナナミの顔を見て、俺は思わず目を丸くする。


 え? ナナミ?

 なんでこんなところにいるんだ……?


「やっぱり翔吾くんだよね? ふふ、久しぶり」

「お、おう、本当に久しぶりだな、ナナミ」


 まさか、こんなところでナナミと再会することになるとはな……。


 たしか、ナナミも今は大学生だったよな? 


 ナナミのヤツ、今は彼氏いるのかな?

 もし彼氏いないんだったら……ワンチャンナナミと付き合えるかもしれない。

 って、俺は何を考えてるんだ。


「本当に久しぶりだね、翔吾くん。元気にしてた?」

「ま、まぁな……」

「ふふ、そっか、そっか。あっ、今は大学生だよね? どう、大学で新しい友達できた?」

「ううん、まだできてないよ……」

「あはは……まだなんだ。まぁ大学って友達作りにくいもんね」


 高校生の頃は友達いたんだけど、大学ではまだいない。

 今の俺はボッチなんだ。

 はぁ……泣きたくなってきた。


「まぁボッチでもいいじゃん。君には可愛い彼女いるんだし」

「俺に可愛い彼女? 一体何のことだ?」

「翔吾くん、今も穂香ちゃんと付き合ってるんでしょ? ならボッチでもいいじゃん」

「……」


 コイツ、何言ってんだ?


 俺と穂香はもう別れたぞ?

 んっ? あっ、そうか。

 まだナナミは俺と穂香が別れたこと知らないのか。


「穂香とはもう別れたよ。今はフリーだ」


 俺がそう言うと、ナナミは「……ぇ……?」と驚き混じりの声を漏らす。

 混乱しているように見えた。


「穂香ちゃんと別れたの……?」

「うん、別れたよ」

「いやいや、意味わかんないよっ。二人ともラブラブだったじゃん。なのに、どうして別れたの? もう穂香ちゃんのこと嫌いなの……?」

「嫌いなわけねぇだろっ……今もアイツのことは好きだっ」

「……」

「本当は穂香と別れたくなかったよ。けどアイツが『他に好きな人できたから別れてくれ』ってお願いしてきたから……仕方なく別れたんだっ」


 俺は今も穂香のことが好きだ。

 けど穂香アイツはもう俺のこと好きじゃないんだよな……。

 はぁ……マジで辛い。

 

 早く穂香のこと忘れたいけど、なかなかアイツのこと忘れられないんだよな。

 もはやこれは呪いだな……。


「……ナナミはどうなんだよ? 今は彼氏いるのか?」

「ううん、今はいないよ。アタシもフリーです」


 へぇ~、ナナミもフリーなんだ。

 美人だから絶対に彼氏いると思ったんだけどな。


 彼氏いないんだったら、ワンチャン付き合えるかもな。


「翔吾くん、もう夜ご飯食べた?」

「いや、まだ食べてないけど」

「なら一緒に食べない?」

「え? 一緒に……?」

「うん、ダメかな?」

「い、いや、別にダメではないけど」

「ふふ、じゃあ決まりだねっ」

「……」


 久しぶりにナナミと一緒に夜ご飯を食べることになった。


 疎遠気味だった幼馴染と一緒にご飯を食べるのは気まずいけど、ちょっとだけ期待している自分がいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る