第8話 今更

 今日も翔吾くんに話しかけてみたけど、また無視されてしまった。

 なのに、他の女の子とは楽しそうに会話してるんだよね……。


「翔吾くん、昨日ワタシがお勧めしたアニメ観てくれた?」

「え? あぁ……ちゃんと観たぞ。全く面白くなかったけどな」

「え? それマジで言ってる? ワタシはあの作品めっちゃ好きだけどな~」

「俺、ああいうラブコメアニメ嫌いなんだよ。特に昨日観たアニメは主人公が鈍感すぎてイライラしたわ」

「あはは……それは仕方ないよ。主人公が鈍感じゃないとラブコメは一瞬で完結しちゃうからね」

「まぁ確かにそうだな」


 今もアタシ以外の女の子とアニメの話で盛り上がっている。

 あぁぁ……ムカつくっ。

 本当にムカつく。


 なんでアタシのこと無視して、他の女の子と楽しそうに会話してるのっ。

 なんでアタシに構ってくれないの。

 

 酷いよっ、そんなの酷すぎるよっ……。


「あっ、そうだ。翔吾くん、明日ワタシと一緒に映画見に行かない?」

「映画? うん、まぁ別にいいけど」

「え? マジで!? いいの!?」

「うん、明日は暇だからいいよ」


 明日、翔吾くんはアタシ以外の女の子と一緒に映画を観に行くらしい。

 それってデートだよね? 

 やっぱり映画デートだよね……?

 

 え? ちょっと待て。

 翔吾くん、本当にその子とデートするの……? 

 そんなのダメだよっ。

 絶対にダメだよっ……。


 翔吾くんがアタシ以外の女の子とデートしているところを想像した途端、ギュッと胸が締め付けられる。

 嫉妬で頭の中が狂いそうになる。


 イライラする。

 本当にイライラする。


 アタシなんでこんなにイライラしてるんだろう?

 もしかしてアタシは翔吾くんのことが好きなのかな?

 翔吾くんのことが大好きだから嫉妬してるのかな……?


「……」


 あぁぁ……そっか、そういうことか。

 アタシ、本当に翔吾くんのことが好きなんだ。

 彼のことが大好きだからこんなに嫉妬してるんだ。

 遅いよっ、遅すぎるよっ。

 なんで今更自分の気持ちに気づくのかな……。


「……」


 幼稚園の頃、アタシと翔吾くんは仲良くなった。

 仲が良すぎて一緒にお風呂入ったことあるし、一緒に寝たこともある。

 幼稚園の頃にふざけてキスしたこともあるんだ。


 高校一年生の頃までアタシと翔吾くんはずっと一緒だった。

 けど、アタシに彼氏ができてから翔吾くんは冷たくなった。


 連絡先をブロックされて、SNSのアカウントもブロックされて、学校で話しかけたら無視してくる。 

 アタシのこと無視するくせに、他の女の子とはいつも楽しそうにアニメの話をしている。

 明日はその子と映画デートをするらしい。

 嫌だよっ、アタシ以外の女の子とデートしてほしくないっ……。

 ずっとアタシのそばにいてほしいよっ。


 アタシ以外の女の子とイチャイチャしている翔吾くんを見て、アタシは自分の気持ちに気づいてしまった。

 アタシは翔吾くんのことが好きなんだ。

 昔から翔吾くんのことが大好きだったんだ。

 今更、自分の気持ちに気づいてしまった。


 遅いっ、あまりにも遅すぎる。

 なんで今更自分の気持ちに気づくのかな……。

 もうアタシには彼氏がいるのに。


 そうだよっ、今のアタシには大切な彼氏がいるんだ。

 なのに、なんで翔吾くんに恋しちゃうのかな……。


 どうしようっ。アタシは本当にどうすればいいんだろう?

 亮太くんと別れて、翔吾くんに告白しようかな?


 いやけど流石にそれは亮太くんが可哀そうだし……。

 

 やっぱり、翔吾くんのことは諦めた方がいいのかな?

 翔吾くんのことは諦めて、亮太くんで我慢した方がいいのかな?


 ううん……やっぱりそんなの無理だよっ。

 翔吾くんのこと諦められないっ。

 翔吾くんを独り占めしたい。

 誰にも渡したくないっ。

 だから……。


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