痩せゴリラの風船筋肉大作戦

アほリ

痩せゴリラの風船筋肉大作戦

 「うっほ!うっほ!うっほ!うっほ!」



 ポクポクポクポクポクポクポクポク!!



 ここは、とあるジャングルの奥地。


 筋肉隆々のゴリラ達が、筋肉の見せ合いをしていた。


 胸をポクポクとドラムのように叩き、黒光りするムキムキした筋肉を誇らしげにアピールしてきた。


 「いよっ!!筋肉がキリマンジャロ!!」


 「二頭筋がジャングルの王者!!」


 「その筋肉美にライオンもトラも涙ぐむ!!」


 オーディエンスのゴリラ達の掛け声が飛んでくる中、逞しい筋肉美を誇るゴリラ達がいろんなポーズを作って己のマッチョをアピールした。


 今、ゴリラのリーダーを決める選考会が開かれていた。


 ゴリラのリーダーになれば名声だけでなく、異性のゴリラ達とのハーレムになれるのも確実。


 筋肉に自信のあるゴリラ達は、挙ってリーダー選考会に挙って参加して、その隆々な筋肉美を存分にアピールした。


 「いいなあーーー!!みーんな筋肉モリモリで。僕なんか・・・」


 リーダーゴリラ選考会のオーディエンスの中に、筋肉美ゴリラとは真逆にガリガリに痩せこけた雄ゴリラが指をくわえて見詰めていた。


 「なあ、スマアト。ここにおめえの出る幕なんかねぇのに、何で来てるんだよ?!」


 痩せゴリラのスマアトの目の前に、ゴリラというよりビースト級の筋肉モリモリの図体のゴリラが立ち塞がってきた。


 「ダンプカさん!!ぼ、僕見てるんですけど・・・そ、そこをど、どいて・・・」


 震えが止まらずビクビクするスマアトは、目の前で仁王立ちする怪物のようなゴリラのダンプカに思いきって言いはなった。


 「なんじゃい!!」




 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!




 怪物級ゴリラのダンプカのドスの効いた返答に、痩せゴリラのスマアトは思わず怯んだ。


 「な、なんでもないです!!」


 「これから俺も出るんだよ!!部外者は出ていきやがれ!!」


 「ここは客席・・・うわぁーー!!!」


 痩せゴリラのスマアトは、怪物級ゴリラのダンプカに胸ぐらを掴まれ、片手でびゅーーーーん!!と空高くぶん投げた。


 「ターーースーーーーケーーーーーテー!!!!」




 どさっ!!



 痩せゴリラのスマアトは、ジャングルの森に墜落して蔦に絡まった。


 「く・・・悔しいよお・・・何で僕はこんなに痩せてるんだ・・・」


 痩せゴリラのスマアトは悔し涙を浮かべた。


 「そうだ!!鍛えればいいんだよ!!鍛えれば!!」


 痩せゴリラのスマアトは、絡んだ蔦を身体中に力を入れて引きちぎって地面に降り立つと、早速腕立て伏せと腹筋運動を始めた。 


 いちにっ!!いちにっ!!いちにっ!!いちにっ!!いちにっ!!いちにっ!!いちにっ!!いちにっ!!


 腕立て伏せ100回。


 腹筋100回。


 だが、幾度もやっても一向にゴリラのスマアトの身体はガリガリに痩せこけたままだった。


 「もう一度!!」


 腕立て伏せ100回。


 腹筋100回。


 「まだ駄目だ!!もう一度・・・」



 がくん!!



 突然、痩せゴリラのスマアトはバランスを崩してその場で倒れた。

 

 「駄目だ・・・やっぱり僕は痩せこけたゴリラのままだ・・・」


 スマアトは、仰向けになって悔し涙で空を見詰めていると・・・



 ふうわり・・・



 「風船が飛んでいる・・・久しぶりだな。風船を見るの・・・そうだ!!」


 痩せゴリラのスマアトは、深く深く深く深く深ーーーく息を吸い込んで頬をめいいっぱい孕ませて息を止めてみた。


 「僕の中に息を入れて膨らまそうも、僕の筋肉は膨らむ訳ないな。そうだ!!風船!!」


 痩せゴリラのスマアトは、今さっき空高く飛んでいった風船が何処から来たのか行ってみた。


 そこには、人間達が住む街があった。


 「ここだな・・・」


 痩せゴリラのスマアトは、ヘリウムガスで大きく膨らんだゴム風船がいっぱい結んである風船屋台を見つけた。


 「人間の店員が眠りこけてる・・・いまのうちだ。」


 痩せゴリラのスマアトは何を思ったか、まだ膨らませてない萎んだゴム風船を口の中にセットすると、ヘリウムボンベで膨らませた。



 しゅ~~~~~~~~~~!!



 痩せゴリラのスマアトの身体の中でゴム風船はどんどん膨らみ、忽ち筋肉隆々な身体になった。


 「これでよしー。」


 風船筋肉ゴリラのスマアトは、ヘリウムガスで半音あがった声で呟き、口の中の風船の吹き口を縛ると、人間の店員が起きないうちに、身体の中のヘリウム風船の浮力でフワフワとジャンプして人間の街から退散した。


 「僕もエントリーしまぁーーーす!!」


 「なんだいその声はー!!」「でもこいつの筋肉がまるで風船みたいで逞しいー!!」


 リーダーゴリラ選考会に飛び入り参加した、風船筋肉のスマアトは徐にポージングして見ているオーディエンスに自らの筋肉?をアピールした。


 「よっ!筋肉がゴム風船!!」


 「今にとパンクしそうなパンパン筋肉!!」


 オーディエンスの掛け声もいっぱい飛んできた。



 

 ズカズカズカズカズカズカズカ!!



 「こいつの筋肉はインチキだ!!」


 突然、ステージに揚がってきたのは怪物級ゴリラのダンプカだった。


 「あっ!ドーピング失格ゴリラが『インチキ』だって!」「インチキ!」「インチキ!」「ぶー!」「ぶー!」


 「んだとこの!!」


 オーディエンスの野次にダンプカは激昂して怒鳴った。


 「なあ・・・おめえ、口に風船入れて筋肉を誤魔化すんじゃねーよ!!」



 バキッ!!



 「おえぇぇーーー!!」


 怪物級ゴリラのダンプカは、突然拳を風船筋肉のスマアトのお腹にぶちかました。


 その時だった。


 風船筋肉のスマアトの口に押し込んだ風船の吹き口が、ほどけてしまったのだ。



 ぷしゅ~~~~~~~~~~!!ぶぉぉぉーーーー!!しゅるしゅるしゅるしゅる!!



.ゴリラのスマアトの身体は、体内に忍ばせた風船から吹き出てきたヘリウムガスで右往左往に周りを飛び回り、怪物級ゴリラのダンプカの側に落着した。


 「おめえ、身体の中にゴム風船なんか忍ばせやがって・・・おめえの方がインチキだろうが・・・!!」


 怪物級ゴリラのダンプカは、スマアトの口の中に忍ばせていた萎んだゴム風船を取り出して、起き上がった痩せゴリラのスマアトの目の前でぷぅ~~~~~~~~!!とおもいっきり口で一気に膨らませ、ぱぁーーーーーーーん!!とパンクさせた。


 チリチリに四散するゴム風船に、スマアトは激しい屈辱を感じた。


 それと同時に、怪物級ゴリラのダンプカへの激しい怒りがこみあがってきた。


 「僕を舐めるなぁーーー!!」


 痩せゴリラのスマアトは、怪物級ゴリラのダンプカに殴りかかってきた。



 バキッ!!



 殴られたのは、痩せゴリラのスマアトの方だった。


 「くっそー!!鼻血でた!!こんにゃろー!!」




 バキッ!!ボカッ!!ドスッ!!バキッ!!ボカッ!!ドスッ!!バキッ!!ボカッ!!ドスッ!!




 やはり、圧倒的だった。


 怪物級ゴリラのダンプカの一方的攻撃で、みるみるうちにゴリラのスマアトの顔はボコボコになった。


 「こらぁーーー!!筋肉をこんなことに使うなぁーーーやっぱりふたりとも失格だぁ!!


 後ろで野太い声がしたと思うと、1匹の筋肉隆々のゴリラが立っていた。


 それは、元リーダーゴリラのバボ二世だった。


 バボ二世は片手にヘリウム風船の束を持ち、もう片手にはドーピングの注射あるケースを持っていた。


 「このゴロツキゴリラ同士が・・・こういう性格だから不正をすると思って『罠』を仕掛けてたが、やっぱり手を出したんだな。」


 ボコボコの顔のスマアトはやっと気付いた。


 人間の街で風船を売っていた店員の正体は、このバボ二世だったのだ。


 「やけに筋肉が逞しい人間だと思ってたら、そうだったのか・・・」


 「スマアト・・・君は筋肉のあるゴリラになろうと、鍛えてるようだな。

 成果が出ている。もう平均的な筋肉のゴリラになってるじゃないか。


 それにダンプカ。このドーピング剤は効き目は一時的だ。

 ほら。平均的なゴリラの筋肉に戻った。


 これから君達は、お互い『仲間』だ。

 いがみあう事は終わり。」


 元リーダーゴリラのバボ二世は、スマアトとダンプカの手をお互い握らせてニッコリした。


 ゴリラのバボ二世の手から離れた、まるでパンパンに張った筋肉のようにふくよかで艶々と輝く2つのヘリウム風船が空高く飛んでいった。






 ~痩せゴリラの風船筋肉大作戦~


 ~fin~

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痩せゴリラの風船筋肉大作戦 アほリ @ahori1970

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