28話目
ついに太谷大治、名倉京子の目に山小屋が見えた。ここからは平坦な道、先に登り終えていた学者仲間たちが駆け寄ってきた。太谷は背負子から名倉を降ろした。そして自分のトレッキングポール二本を名倉の右足、義足用のソケットに括り付けた。
「太谷さん?」
名倉が不思議そうに太谷を見上げた。太谷はそれに答えず誰にとも無く呼びかけた。
「ここからは自分たちで頑張りましょう。右足の義足が折れたのは両手に持っていたトレッキングポールの使い方が下手だからです。そしてみなさん全員、鍛え方が圧倒的に不足しています。」
「自分で地を踏みしめてゴールしたいんでしょ。」
太谷に促され二本のトレッキングポールを義足代わりにして、両脇を学者仲間たちに支えられゆっくりではあるが歩を進める名倉を、太谷は後ろから見守っていた。何故か自分の後ろに小寺先輩の存在を強く感じながら。
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