最終章

 名倉京子のドローン実証実験は無事成功、研究者たちが歓声を上げる中、名倉は太谷の側にいた。

「本当にありがとうございます。貴方が居なければ私はここに居られなかった。この景色はもちろん、仲間と成功をこの場所で分かち合うことも出来なかった。」

 最後のほうは感激で言葉になっていなかった。それでも感謝と感激を伝えたい一心で続けた。

「もうここに来るのも最後、貴方に会えるのも最後、最高のラストシーンをありがとうございます。」

 そう言ってとうとう泣き崩れる名倉、それを見て太谷は不思議そうに呟いた。

「実験は成功、実用化はこれからなんでしょう?これからも何度もここに来なくては。」

 名倉は泣き顔をむりやり笑顔に作り替えて言った。

「もう無理、私にはもうここに来るのは無理よ。私の足では……。」

 太谷は空を見上げて言った。

「まずは両腕を鍛え直しましょう、それから両足の太もも。お仲間もです。1から鍛え直しましょう、何なら俺がみっちりしごいてあげますよ。」

 そして名倉の方に向き直り、

「簡単なんでしょう。天から授かったものを鍛えることなんて。」

と名倉に逆転トライとも言うべき意趣返しを行った。泣き顔と笑い顔でぐちゃぐちゃになった名倉、やり返してニヤニヤしている太谷の上には澄み切った山の青空が輝いていた。

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歩荷の承継 Bamse_TKE @Bamse_the_knight-errant

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