23話目
「疲れない?大丈夫?」
今までとはちょっと違う、初めて太谷大治を労う声が背後から聞こえた。名倉京子は少し冷静さを取り戻し、太谷に気を使い始めた。
「貴女は軽いですから、蚊が留まってるみたいなもんですよ。」
蚊という言葉にひとしきり噛み付いたあと、名倉は話し始めた。
「私のプロジェクトはね、あなたをこんな苦労から解放してくれるのよ。」
太谷は自分の胸になにかざわついたものを感じ始めていた。名倉は続けた。
「山岳地へのドローンマルチコプターによる空中輸送、それが私達のプロジェクト、今まで歩荷でしか運べなかった険しい山にも空飛ぶドローンが荷上げをしてくれるの。そして今日はその第一回飛行実験、今日の決められた時間しか飛行許可が降りなかったから、どうしても今日やらなきゃ、そして私が見届けなくてはならないの。」
太谷は歩を進めながらも少なからず動揺した。この名倉京子という自分の背中にいる女性は、太谷の仕事、歩荷と言う仕事を奪う者であったのだ。
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