24話目

 太谷大治は明るく振る舞い続けた。

「ドローンはどのくらいの時間で荷物をはこべるんです?」

 名倉京子は自慢気に答えた。

「麓からおよそ1200秒、二十分弱で着く計算よ。すごいでしょ。」

 太谷は自嘲した。

「それじゃ俺たち歩荷はまるで敵いませんね。一度荷物を上げるのに三時間はかかりますから。」

 ここで名倉は始めて太谷の心境に気が向いた。

「ごめんなさい、あなたの仕事を否定してるわけじゃないの。ごめんなさい。」

 突然耳に入った意外すぎる名倉の詫び言に太谷は快活を装った。

「気にしないで下さい、俺の仕事は歩荷だけじやないですから。」

 太谷は自分の動揺を隠すように続けた。

「困ったな、ラグビーと筋トレしか知らない脳筋雑頭の俺ですから、次に何するか考えようにも考えつかないなぁ、頭悪くて。」

 太谷の背中からため息が漏れた。

「本当にごめんなさい。でも一つだけ言わせて、あなたは授かったものを鍛えていないだけ、頭だって鍛えるのは簡単、でも授からなかったものはどうにも鍛えられないの。」

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