17話目

 太谷大治が馬返しと呼ばれる崖を見下ろすと、若い女性が不貞腐れたように座り込んでいる。なるほどあれが要救助者かと太谷は頷いた。太谷が階段を降りる気配に気付いた要救助者の女性は、まず太谷の巨軀に驚いた。まあ、太谷本人からすればいつものこと、体に驚かれるのは慣れっこだ。

「大丈夫ですか?」

 太谷は優しく声をかけた。見れば見るほど小さな女性、救助は簡単そうだ。そんなことを考えていると、女性は太谷に向き直った。

「すぐに私を担いで、早くしないと仲間に追いつけない。午後2時には山小屋につかないと行けないの。」

 太谷は初対面の若い女性に牛馬の如き扱いをうけ混乱した。

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