12話目
太谷大治は小寺夫人と連れ添い、そして小さく軽くなってしまった小寺先輩を自分の大きな背中に乗せて山小屋へ向かった。緩和病棟の管理者にのスタッフたちは寛容なだけでなく、なんと登山経験のある看護師をこの登山に同行させてくれた。
「太谷、無理するなよ。」
背中から太谷を気遣う小寺先輩の小さな声と軽さに、隠しきれないすすり泣きで太谷は答えた。
「先輩、馬返し上がります。しっかり捕まっていてください。」
山小屋へ向かう山道はこの一本しかなく、その序盤に10m強の切り立った崖、馬返しが存在していた。その馬返しと呼ばれる崖には今でこそ金属製の階段があるが、階段が作られる以前はここから先を進むにはロッククライミングの技術が必要であった。この山小屋に人間が自分の体で荷揚げしなくてはいけない理由はこの馬返しの存在であった。
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