10話目
小寺先輩の病気は胃癌であった。その病魔はあっという間に身体全体を蝕み、回復はおろか春を迎えるのも難しい状態となっていた。日に日に痩せていく小寺先輩の姿を見て太谷大治は密かに泣いた。どうすることもできない自分を責めて嘆く夫人を見てまた泣いた。献身的に行われた治療は功を奏さず、いよいよ小寺先輩は緩和病棟に移り、癌と戦うのを止め苦痛を和らげながら最後を迎える準備に入った。
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